2009年07月05日

【リンツ】南北トラム地下新線計画が進展

このところ立て続けに低床車の受注が続くボンバルディアから,今度は
リンツ(LINZ LINIEN GmbH)より23本のFLEXITY Outlook(Cityrunners)の
注文を受けたとの発表がありましたが,そのリンツでは,かねてより懸案
だった市内地下線計画が進展していることを示す発表が出ています.

リンツの市内サービスを統括する市営の会社LINZ AGの監事会は,この度
ミュールクライス鉄道(Mühlkreisbahn)をリンツ中央駅に乗り入れさせる
RegioLiner計画と,第二の市内トラム路線計画を,リンツで市電などを
運行するLinz Linienに委任しています.調査費用? として2百万ユーロの
予算も計上されました.

ミュールクライス鉄道をリンツ中央駅まで乗入れさせるためには,市内を
南北に縦貫する第二のトラム路線構築が必要不可欠です.
今も中央駅と,ミュールクライス鉄道の発着する街外れのウアファール駅
(Bahnhof Linz Urfahr)を結ぶトラム路線がありますが,既に一日10万人
以上の利用者があるそうで,いずれ飽和状態になるとみられています.

そこで考えられたのが,現在のトラム路線の東側にルートをとり,ほぼ
全線を地下走行する新線計画です.南北の流動を補うだけでなく,市の
東側には開発の見込まれる地域もあり,その交通手段にもなるわけです.
そして第二段階として,ミュールクライス鉄道を中央駅まで導く役目も
果たすことになります.

今後数か月をかけて,南北地下新線の詳細ルートや駅の位置などの検討が
重ねられることになる模様です.

公式発表にはPDFファイル版の地図へのリンクもあります.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
03.07.2009 Aufsichtsrat beauftragt LINZ AG LINIEN mit Studie
(LINZ AG 公式サイトへのリンク)
発表前夜にも報道がありました.
03. Juli 2009 Linz AG beschließt Budget für U-Bahn
(OÖNachrichten Zeitung ニュースへのリンク)
02. Juli 2009 Startschuss für Linzer U-Bahn fällt
(oe24 ニュースへのリンク)

ミュールクライス鉄道の中央駅乗入れに際しては,今の形態のまま乗入れ
するCity-S-Bahnという構想もありましたが,そちらは沿線人口8800人と
1万7千人分の職場を結ぶだけなのに対し,南北地下新線経由のRegioLiner
なら,沿線人口2万人と2万6千800人分の仕事場を結ぶことになるという
分析があるそうです.

冒頭でお伝えしたボンバルディアの発表:
July 3, 2009 Bombardier to Supply 23 FLEXITY Outlook Trams to Linz
(Bombardier 公式サイトへのリンク)

リンツにはFLEXITY Outlook(通称Cityrunners)が33本在籍しています.
今回の追加でペストリングベルク鉄道用の2本を除く本線向けだけで56本
体制になるようです.納入は2011年からとのことでした.

【リンツ】関連ログ: 2008/8/31 ミュールクライス線トラム化? ほか

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2009年07月04日

【Alstom】パリT3で架線レス電車の実証実験へ

アルストム(Alstom Transport)とパリのRATPが発表したところによれば,
新技術を搭載した100%低床車シタディス(Citadis)の1本が,パリのトラム
路線T3で,今後一年間の営業運転に入ります.

その新技術とは,架線からの給電なしでも走行可能な,STEEMと呼ばれる
路面電車のエネルギー利用の効率化を図るシステムです.
STEEM: Système de Tramway à Efficacité Energétique Maximisée

アルストムは,近代的な地表集電(APS)方式をいち早く実用化し,架線を
張らず路線を建設しても電車を走らせられる技術を既に持っていますし,
バッテリーで走ることが出来るトラムでも先駆者的な存在です.しかし,
他社は後発の強みもあってか,近年急激に普及してきた高効率で軽量な
蓄電システムを採用しており,費用が嵩み気味で気象状況にも左右され
やすい地表集電よりも,効率のよいキャパシタなどによる架線レス化の
分野でも,遅れをとらないようにする構えのようです.

具体的には,シタディスの屋根の上に15キロのキャパシタを48基搭載し,
停留所ではパンタグラフを上げて急速充電を行い,停留所間ではパンタを
下げて走れることを,営業運転を行いながら実証しようとしています.
このキャパシタはブレーキによる発電も吸収するため,30%のエネルギー
節約になるとも言われています.

パリのトラムT3号線(Pont du GariglianoとPorte d'Ivry間)で実験が行わ
れるSTEEMは,フランス環境エネルギー省(ADEME)が出資する,地上交通に
関した技術革新の実験研究プログラム(PREDIT)の一環だそうです.
ADEME: Agence de l'environnement et de la maîtrise de l'énergie
PREDIT: Programme de Recherche et d'Innovation dans les Transports Terrestres

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
01/07/2009 La RATP et Alstom expérimentent le projet STEEM,
pour un tramway encore plus économe et autonome

(PDFファイル) (RATP 公式サイトへのリンク)
RATP: Régie Autonome des Transports Parisiens

AFPの記事を載せたニュースサイト:
03/07/2009 Ile-de-France. Expérimentation d'un système d'économie
d'énergie sur le tram parisien

(La Gazette des communes ニュースへのリンク)
03 juillet 2009 Expérimentation d'un système d'économie d'énergie
sur le tram parisien
(Romandie News ニュースへのリンク)
ほとんどRATPのコミュニケと同じ内容ですが,専門色の強いサイトには
いち早く情報が載っていました.
02/07/2009 La RATP et Alstom expérimentent un nouveau système de
tramway économe en énergie
(Actu-Environnement ニュースへのリンク)

STEEMが搭載されているのは,今T3に配属されている21本のCitadis 402の
なかの,301号車(n° 301)のようです.

【Alstom】関連ログ: 2009/6/13 新規トラム導入廉価モデル開発へ

これに似たようなことで,リスボン近郊テージョ(タホ)川南岸のメトロ
(MST)でも,シーメンスが次世代の路面電車モデルAvenioに搭載するハイ
ブリットシステムの実験を行っていました.

【Siemens】関連ログ: 2009/5/25 ハイブリッドトラム概要解説記事

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2009年07月03日

【ハンブルク】シュタットバーンは全線架線下?

ハンブルクで復活が計画されているライトレール(Stadtbahn)の,決定
ルートや車両規格などが,このほど明らかにされた模様です.

最初に着工されるのは,ハンブルクの北東部にあたるSteilshoopやブラム
フェルド(Bramfeld)地区と,Uバーン(地下鉄)のU1系統とU3系統の乗換え
駅となっているKellinghusenstraße駅の間の,約7.6キロ区間です.
この間に12の停留所が設けられて,約20分で結ばれることになりますが,
さらに最終的には,Kellinghusenstraße駅から長距離列車も発着している
アルトナ(Altona)駅まで延長される路線計画です.

この1月には懸案となっていた途中ルートも,Kellinghusenstraße駅経由
ということに落ち着いたのでした.
北側ルートのLattenkamp駅経由が見送られた背景には,選ばれた南側の
ルートのほうが若干距離が短いことに加え,利用者数が多いと見込まれる
こと,U1とU3に接続できること,Winterhuder Markt地区やEppendorfer
Landstraßeでの開発が期待出来ることなどにあるようです.

第一期区間で5分間隔の運行を行う場合,予備車を含めて車両は14本が
必要とされていて,その規格は,車両幅2.65mが採用され,全長37mに及ぶ
低床車です.

この度ルートが確定したことで,今後は今夏までに最終素案が確定され,
秋から住民との対話なども予定されています.その後も手続きを経て最終
承認は2011年の秋ごろ,それを受けて着工は2012年春になり,開業予定は
2014年の見通しとなっています.

ハンブルク都市州の都市開発と環境省からの発表とメディアの記事:
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
01.07.2009 Erste Stadtbahntrasse führt über Kellinghusenstraße
(Behörde für Stadtentwicklung und Umwelt へのリンク)
1. Juli 2009 Stadtbahn rollt von Altona über Eppendorf nach
Steilshoop
(DIE WELT ニュースへのリンク)

DIE WELTの記事には,ハンブルクのシュタットバーン(Stadtbahn)は,
全線が架線走行になるという文が載っています.
ひと昔前なら,これは当たり前の話でしたが,昨今は架線を張らず電車を
走らせる技術が発達してきて,ドイツでも実用化が目前に迫っています.
それでも,ハンブルクのような気象条件(寒冷地)では,たとえば第三軌条
集電? (Strom führende Schienen)などは脆弱性があるとして,採用が
見送られたとも読めます.

【ハンブルク】ライトレール 関連ログ:
2009/1/09 シュタットバーン初期路線決定
2008/9/21 2014年ライトレール運転か?

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2009年07月02日

【ガルベストン】アイク襲来後のトロリー現状

メキシコ湾沿いのガルベストン市(Galveston)は,2008年9月に襲来した
ハリケーン アイク(Ike)の上陸で,高波による浸水の被害を蒙りました.

1988年から運行を開始していたレトロな趣の路面電車(Galveston Island
Trolley)も例外ではなく,ヴィクトリア朝風の建物で観光客が多く集まる
ストランド地区(The Strand)の軌道や,車庫にいた所有車両の4台全てが
塩分を含む水に漬かってしまいました.今回は,その後の現状を伝える
記事が見つかりましたので,紹介しておきます.

ガルベストン アイランド トロリーの車は,ディーゼル発電機を搭載し,
架線の張られていないガルベストンアイランド内の路線を行き来していた
ものですが,浸水で使い物にならなくなった動力系統や車内設備などの
交換には,一台あたり60万ドルが必要とされています.

車両には一台につき20万ドルの保険が掛かっていますが,残りは連邦緊急
事態管理庁(FEMA)とガルベストン市が,負担を分け合わなければならない
ようです.(一台20万ドルずつ?)
FEMA: Federal Emergency Management Agency

この現状では,いずれは運転を再開することにはなるかもしれませんが,
その時期は全く定かでないということのようです.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
July 1, 2009 Trolley repairs waiting on insurance, FEMA funds
(The Galveston County Daily News ニュースへのリンク)

この記事によれば,2007年9月から2008年8月までの輸送実績は22,069人,
運賃収入は$11,213だったそうです.
一方,運行にかかる経費は百万ドルで,ガルベストンアイランド内で路線
バスなども運行しているIsland Transitの予算の四分の一を占めます.

アイク襲来前の時点でも,空気輸送のような有様でしたので,いっそ廃止
してしまえという声も当然上がっていたのですが,導入時に連邦政府から
補助金を受けたため,耐用年数まではそう簡単には廃止できませんし,
ガルベストンの回復を目指す委員会は,今後もトロリーを観光資源として
とらえていく模様です.

【カルベストン】関連ログ: 2008/1/06 トロリー季節運行も視野に

同じくハリケーンによる浸水で多大な被害を蒙ったニューオリンズでも,
その余波は続いています.
独立記念日の三連休が明けた7/06からカナルストリート線(Canal Street
streetcar line)は,当分の間はバスで代行運転されるそうです.これは
カトリーナのもたらした水に漬かった地下埋設のフィーダーケーブルの
交換に伴う措置で,代行期間は八週間に及ぶ予定です.
代行バスは道路中央の軌道上を走らないため,その期間中は歩道から乗降
するようにとの注意も出ていました.

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2009年07月01日

【ベルリン】Flexity Berlin 40m車は40本に

BVGが正式に次期低床車(Flexity Berlin)の99本購入を発表しました.
去る6/29に開かれた監事会(Aufsichtsrat)の決定を受けてのものです.
価格は最大3億0530万ユーロと表現されています.
BVG: Berliner Verkehrsbetriebe

地元メディアによればオプションが33本あり,それを含めて合計132本,
総額3億9760万ユーロにまでなる模様です.

プロトタイプには4つのバリエーションがあります.運転台が片側だけか
両エンドにあるかに加えて,短編成(30.8m)か長編成(40m)です.
長さは輸送力に影響するため,長編成に比べると定員が60名少ない短編成
だけ発注されても困るという声が,より一層の混雑を懸念する利用者団体
から上がっていました.

短編成と長編成では価格差が15万から30万ユーロあるようです.先月も
紹介しているように,BVGは慢性的な予算不足から全てを長編成でという
ような要請には,とても応えられない状況です.

その割合は,先週の時点では半々とみられていたものの,ふたを開けて
みると,メディアが今回報じたところでは,短編成59本,長編成40本の
合計99本になっていて,これがBVGの見解では需要に即している割合との
ことでした.

公式発表と地元メディアの報道:
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
30.06.2009 FLEXITY Berlin
(BVG 公式サイトへのリンク)
1.7.2009 300 Millionen für neue Straßenbahnen
(Der Tagesspiegel ニュースへのリンク)
30. Juni 2009 BVG bestellt 99 neue Straßenbahnen
(Berliner Morgenpost ニュースへのリンク)

なお,最初の13本は全て長編製になるようで,投入が予定される系統は,
M2, M4, M5, M6, M8, M10, M13, 50 とされています.いずれも利用者の
多い路線だそうです.

その後も年間21本ずつの投入が予定され,2017年までには237本所属する
旧型車(Tatrafahrzeuge)を全て置換えます.次期低床車(Flexity Berlin)
は,その長短に関わらず1本でタトラ車の2本分に相当しています.

【ベルリン】Flexity Berlin 関連ログ:
2009/6/15 Flexity Berlin 99本発注へ?
2008/9/17 Flexity Berlinは,街中のICE
2008/8/19 Flexity Berlinは10月からM4で?
2008/5/30 9月にFlexity Berlinお披露目へ
2007/4/14 Flexity Berlin 詳細明らかに

余談ですが,ベルリンが本拠のBombardier Transportationの話です.
現時点でボンバルディアのサイトには,今回のBVGからの発表に対応した
情報は特に見つかっていないものの,トロント向け204本の低床車受注が
TTCとの間で最終的な合意に達したとの話が,今は目を引いています.
TTC: Toronto Transit Commission

TTCは,旧型車置換え用の100%低床車の発注先をボンバルディアに決めて
いましたが,カナダ政府が基準に適わないことを理由に,景気対策資金は
回さないと先週になって表明,あてにしていた資金を失ったトロント市は
発注期限を目前に控えていただけに,大騒ぎになりました.
最終的には,購入資金の三分の一を負担するだけだったトロント市が,
オンタリオ州の負担分を除く全体の三分の二を出すことで決着し,TTCは
期限を流したら再々入札を強いられるところでしたが,ボンバルディア
との最終合意に至ることが出来たのでした.

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2009年06月30日

【フェニックス】開業半周年,延伸は先送り

車社会のフェニックスにライトレールが誕生して半年余,7/01から運賃の
4割程度の値上げが実施されますが,望まれていた週末夜の午前2時までの
運転も実現する運びになっています.

予想を上回る利用者数は,4月までは好調に推移して,4月は月間百万人も
突破しました.さすがに5月は勢いが衰えて93万人弱だったものの,平日
だけで比べれば,1月から5月の間で9.7%の増加です.
5月に落ち込んだのは,大学が夏休みに入ることや,冬期だけ避寒目的で
居住していた人たちが戻っていたことなどに原因があるようです.
特にアリゾナ州立大学の学生は,利用者全体の25%を占めていると言わ
れています.

この半年間で,ライトレールが巻き込まれた事故は27件でしたが,重大な
ものは発生していない模様です.
また4月の時点では,無賃など不正乗車件数も大変少なく,220件で全体の
1%未満に過ぎないそうです.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
Jun. 29, 2009 6 months after debut, light rail remains busy
(The Arizona Republic ニュースへのリンク)

このように開業した路線は滑り出し快調ですが,今後の展開に関しては
足踏み状態になります.

ライトレール延長計画では,最も早いもので2012年にもフェニックス側を
北に延伸させるNorthwest Extensionの第一期区間(3.2マイル)が開通予定
でしたが,16か月遅れて2014年になると,最近明らかにされていました.

これは連邦政府からの助成に頼らず,地域の売上税からの税収を財源と
しているため,景気低迷で予定が狂っているからです.
この調子では,ライトレールそのものの延長よりも,スカイハーバー国際
空港への連絡ピープルムーバーのほうが,先に(2013年に)開通します.
Jun. 25, 2009 Light-rail extension planned for 19th Ave. delayed
until 2014
(The Arizona Republic ニュースへのリンク)

路線延長計画概要: Transit Corridors and Light Rail Extensions
(Valley Metro 公式サイトへのリンク)

フェニックスの東隣でリゾート地でもあるスコッツデール(Scottsdale)市
では,ライトレール延長を見越して昨年Valley Metroに加盟したばかり
ですが,年間5万ドルの加盟料を惜しむわけでもなく,当面見込みがなさ
そうだとして,Valley Metroからの脱退を今月決めていました.

余談ですが,
アリゾナ州立大学では,これまでValley Metroを自由に乗降できるU-パス
(ASU U-Pass)を,PTSを通じて学生向けに2万7千枚発行していてました.
今回のValley Metro値上げで,U-パスも年間は$80,学期ごとなら$40に
変更されますが,実はこのU-パス,これまで無料だったようです.
来期から有料になると言っても,月間に換算すると9ドル未満にあたり,
通常の月間パス(31-Day Pass $55)との差額はPTSが助成します.
PTS: Parking and Transit Services

flickr から: ASU卒業式の混雑
Creative Commonsの条件に基づき,参考画像を貼り付けておきます
ASU Graduation crowds by Rail Life
ASU Graduation crowds
Taken on May 13, 2009

【フェニックス】ライトレール関連 最近の話題:
2009/5/29 通勤パスがLRTの重荷に?
2009/2/19 平日上回る土曜の利用者数

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2009年06月29日

架線なしなら軌道もニセモノで代用できる?

米国では,自動車の速度超過を防ぐため,路面に貼り付ける陥没の穴を
模したシールがあるそうです.ポットホールと呼ばれる陥没が行く手に
あれば,たいていのドライバーはスピードを落とそうとするからです.

にせポットホールの効果のほどはともかくも,そのアイディアを拝借し,
ストリートカー(streetcar)が路線バスよりも優位に立つ点の一つである
レールの存在を,実際に道路に鉄軌道を敷くのではなく,ペイントしたり
貼ったりして表現したら,安上がりでないかという話がありました.

一度は邪魔者扱いして撤去され,路線バスよりも特別な措置を施さない
限り速度が速いわけでもない上,資金も余計にかかる路面電車が,今再び
導入されようという動きが活発なのは,バスよりも電車のほうが永続性が
あり,その存在感で利用者は行き先を案ずることなく乗降できるほか,
開発業者にとっても,その地域に多額の資金が投じられてレールが敷かれ
ていれば,おいそれとルートが変わるわけないと安心して投資することが
でき,結果として沿線に経済効果がもたらされ,衰退化していた中心部が
再活性化されて,導入資金を上回るからに他なりません.
英語では不変性とか永続という意味のpermanenceという言葉が,バスより
路面電車が優れている点として,よく使われています.


このPermanenceには,道路上のレールだけでなく空中の架線が含まれる
ことも多いようです.しかし,最近は架線がなくても電車を走らせられる
技術が発達してきて,景観保護だけでなく市電導入の資金節約のため,
架線なしの設計が検討されているところがあります.
今月は話題の多いノースカロライナ州シャーロットのストリートカーも
その一つですが,架線なしでは存在感が少し失われて,永続性も弱まって
しまうのではないかという懸念が,地元紙のDr. Traffic欄に掲載されて
いました.

これに対してシャーロットの市電担当者は,架線がなくなるぐらいでは,
Permanenceが損なわれることはないと考えています.
それならばということで,軌道も鋼鉄製レールでなく塗装か写真シールで
代用して,その上にバスを走らせれば,もっと安上がりになるという話に
発展した次第です.

現実的な話ではなさそうですが,ちょっとした発想の転換につながるかも
しれず,日本では週が明けてしまったものの,週末の読み物として面白い
のではないかと考え,紹介しておきます.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)

Jun. 28, 2009 Imagine the streetcar with painted rail lines
(The Charlotte Observer =Dr. Traffic= へのリンク)

シャーロットに限定したものではありませんが,今月初めには路面電車が
バスに勝る36の根拠と題した話も出ていました.
June 3rd, 2009 36 Reasons Streetcars Are Better Than Buses
(The Infrastructurist へのリンク)

【シャーロット】ストリートカー 2009年6月の話題:
2009/6/14 架線なし燃料電池市電の勧め
2009/6/07 市電建設調査費捻出の賭け

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2009年06月28日

【ワシントンDC】車両老朽化の対策に苦悩

2007年8月に起きたミネソタ州のハイウェイ崩落をきっかけに,全米で
道路関連施設の老朽化が指摘され,その補修が後の連邦予算に反映されて
いきましたが,主に東海岸に点在する老朽化した車両や設備を数多く抱え
ている通勤鉄道に対しても,同じようにいくでしょうか.

ワシントンDC北部でWMATAの運行する地下鉄(メトロレール=Metrorail)が
追突事故を起こして以来,国家運輸安全委員会NTSBの現場検証のため,
ラッシュ時だけ単線で運転されていた区間も,現地時間土曜(6/27)から,
徐行運転は残るものの,ほぼ平常通りの運行に戻ったそうです.
WMATA: Washington Metropolitan Area Transit Authority
NTSB: National Transportation Safety Board

それに先立ち,犠牲になった女性運転士の葬儀も行われ,NTSBの調査結果
から,ATOによる自動運転中に非常ブレーキが作動していたことが明らか
になっていたこともあり,被害を最小限に食い止めたとして,参列した
WMATA責任者は彼女をヒーローとして偲んだことも,伝えられています.

この事故の原因究明は,NTSB主導のもとで行われますが,今後数週間から
数か月かかると言われています.
現時点で判明しているのは,追突した112列車がATO運転中であったこと,
非常ブレーキが作動していた形跡があること,先行列車(214)の運転士は
手動運転中で,前方駅に別の列車が停車中のため停止していたと証言して
いること,そしてNTSBの再現によれば,その先行列車の存在がシステムに
検知されなかったことです.これで,軌道回路の問題が浮上しています.

6/25時点のNTSBの発表:
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
June 25, 2009 NTSB Issues Update On Investigation Into Collision
Of Two Metrorail Trains In Washington, D.C.

(NTSB 公式サイトへのリンク)
車両番号まで記載された,News Q & A: June 22 Red Line Collision
(WMATA 公式サイトへのリンク)
これによれば,112列車の組成は,1079-1078-1071-1070-1130-1131.

一方メディアのほうはと言えば,追突した列車が1970年代から走り続けて
いる最古参(1000シリーズ)の6両で組成され,実はこの1000シリーズが
三年前に安全上の懸念から当局に退役を提言されていた事実が明るみに
なっており,その時に車両を置換えてさえいれば,事故は防げたかもしれ
ないとして,そのまま使い続けたWMATAの責任を問う姿勢です.

もっとも1000シリーズが問題視されたのは,衝突時の耐衝撃性が後に導入
された車両より劣るということで,追突そのものが防げたわけではなく,
衝突による車両の破壊の程度が軽減されて,犠牲者の数が減っていたかも
しれないというものです.

WMATAでは現在,1000シリーズだけの列車組成を止め,編成中央に封じ
込めることを検討しています.これにより両端が耐衝撃性の高い比較的
新しい車両になり,今回のような衝突でも車両の破損が抑制されるのでは
ないかと期待されています.
June 26, 2009 Metro Board to Consider Scrapping Older Train Cars
(WJLA-TV ABC 7 News ニュースへのリンク)

WMATAが車両の置換えを進められなかったのは財政難からですが,メトロ
レールの車両は全部で1126両あり,うち290両が1000シリーズで,全体の
四分の一近くを占めます.この置換えには最低でも8億1100万ドル掛かる
そうです.それに加えリースバック方式のため,1000シリーズの支払いは
2014年まで続くことになっています.

従来ハイウェイへの対応に比べて軽視され続けた公共交通への投資は,
ここにきて景気対策法により若干の改善が見られ,幾つかの新規事業など
には弾みがつきつつあるようです.
しかし,その施設などの三分の一は最低ラインの状態と,この4月にFTAに
査定された,年間30億旅客キロの輸送実績がある全米7都市の通勤鉄道に
関しては,今後も更に利用者数が増え続けると予想される中においても,
老朽化対策に必要な巨額な資金用に回ってくる連邦予算は,これまでの
ところ全くありません.

旧型車の置換えが困難な現状を伝え,事故原因の解明前にも関わらず,
今回の事故が今後に与えるかもしれない影響を示した報道:
Jun. 26, 2009 The Metro Crash: A Nation's Aging Transit System
(TIME へのリンク)
June 27, 2009 D.C. Metro Crash Highlights Underfunding of Public
Transit Systems
(ABC News ニュースへのリンク)

今後,軌道回路の不具合などが立証され,それも老朽化が引き金だった
ともなれば,風向きが変わってくるでしょうか.

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2009年06月27日

【ポートランド】運賃無料ゾーン見直し(3)

設置から34年経ち,当時は存在しなかった軌道系公共交通(ライトレール
MAXとストリートカー)が充実し,この9月にはダウンタウンに新たな動脈
(ライトレールMAXグリーンラインとイエローラインの旧バスモール区間)
も加わることになり,TriMetは運賃無料ゾーン(フェアレススクエア)の
見直しを,再び図ろうとしています.
TriMet: Tri-County Metropolitan Transportation District of Oregon

前回2007年末の提案では,運賃無料は夜間を除くという時間制限を導入
しようとしましたが,猛反対にあい見送りになっていました.
今度は,以前も話にあがっていた,ライトレール(MAX)とストリートカー
(市電)だけを運賃無料の対象にするというものです.

路線バスを対象外とするのは,9月のグリーンライン開通に伴い,新たに
中心部を南北に走るライトレール路線が出来ることで,運賃無料ゾーン
(Fareless Square)内の移動ならバスを使わずとも行き来できるように
なることで,以前から問題視されてきた,バス運転手による運賃が必要か
不要かを見極める乗客の乗降場所確認の困難さを解消し,無料区間だけの
短距離乗車の乗降時間で引き起こされる運転遅れを回避したいからです.

試算では,無料ゾーン内の移動の96%は,バスモールにMAXグリーラインが
走り始めた後の鉄道網だけで賄えるとされていました.

ただし,TriMetの中でも意見が分かれていて,変更には最終的に理事会の
承認が必要となりますし,一般の利用者からの意見も求めていますので,
また紆余曲折があるのかもしれません.

公聴会の日取りなども載せた公式発表:
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
June 24, 2009 Fareless Square Change Proposed
(TriMet 公式サイトへのリンク)
おりしも予算不足からバス運行の減便も計画されていて,それとあわせて
伝える記事も出ています.
June 24, 2009 TriMet wants to drop free bus service in Portland's
Fareless Square
(The Oregonian ニュースへのリンク)
June 24, 2009 TriMet proposes cuts
(Portland Business Journal ニュースへのリンク)

【ポートランド】Fareless Square 関連ログ:
2008/1/14 運賃無料ゾーン見直し(2)
2006/4/22 運賃無料ゾーン見直しか?

一方,ウィラメット川(Willamette River)東岸へ市電を延長させる計画
(Eastside Streetcar Loop Project)の着工式が,執り行われたことを
伝える記事も出ていました.

June 25, 2009 Construction Begins On Eastside Streetcar Loop
(Oregon Public Broadcasting News ニュースへのリンク)
6/25 Portland Streetcar Loop groundbreaking
(KOIN News 6 ニュースへのリンク)

完成は2012年春先になる予定です.

【ポートランド】ウィラメット川東岸の市電関連の直近ログ:
2009/5/01 市電東部延長へ連邦補助金

内容が間違っていたりリンク切れがありましたら,ご容赦ください.
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2009年06月26日

【ブラジリア】モンペリエから運営ノウハウ

ブラジルの首都ブラジリアは,未開の地に建設された,いわば計画都市.
近年開業した2路線のメトロ以外は,圧倒的多数の自動車に,路線バスや
タクシーを移動に利用するだけでしたが,ライトレール(VLT)を導入する
計画もあります.
VLT: Veículo Leve sobre Trilhos

ブラジリア ライトメトロ(Metrô Leve de Brasília)は,南部にある空港
から,W3通り(Via. W Três Sulなど)=メトロが地下を走るハイウェイより
西側で南北を縦貫する通りの地上を走り,北部にあるTerminal Asa Norte
までの23キロ弱及ぶ路線網になる予定です.

ライトメトロは2014年の開業を目指していますが,これは同年ブラジルで
開催される2014 FIFAワールドカップも,当然意識されています.導入は
W3通りを再び活気付かせる目的もあり,中心部? の8.7キロが先行開業と
書いてある記事もありました.

ブラジリアの知事は,ただいまフランスとスペインを訪問しています.
その訪問先の一つモンペリエでは,同市からトラムを柱とした公共交通の
導入と運営のノウハウを,6年間におよび伝授してもらう契約に,署名
したことが伝えられています.フランス開発庁ADFから1億3千万ユーロの
金融支援も,これに含まれているようです.
ADF: Agence française de développement

技術サポート料35万ユーロと報じられていますが,モンペリエでトラムを
運営しているTAMが,ブラジリアで実務を担います.
TAM: Transports de l'agglomération de Montpellier

ブラジリアからの公式発表(ポルトガル語):
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
25/06/2009 GDF fecha parceria técnica com empresa francesa para a
construção do VLT

(GDF | Agência Brasília 公式サイトへのリンク)
ブラジル側の記事(ポルトガル語):
25/06/2009 GDF sistema de linhas de bondes que poderá ser
utilizado na W3
(Brasília em Tempo Real ニュースへのリンク)
フランス側の記事(フランス語):
25/06/2009 Languedoc-Roussillon. Montpellier aidera Brasilia à
réaliser sa première ligne de tramway

(La Gazette des Communes des Départements des Régions へのリンク)
25 juin 2009 Un tramway nommé Brésil
(Midi Libre ニュースへのリンク)

ブラジリアのライトメトロ計画概要: Metrô Leve de Brasília
(Companhia do Metropolitano 公式サイトへのリンク)

フランス側の記事には,ブラジリアに提供するノウハウのリストも載って
いました.それによれば,駐車場や市内中心部の車両規制の方針から,
リアルタイム管理システム,カーシェアリング,それに停留所への足と
して活用してもらう,パリのヴェリブ(Vélib')のようなセルフサービス式
自転車まで含まれています.

内容が間違っていたりリンク切れがありましたら,ご容赦ください.
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