2007年08月30日

【スペイン】2007年8月トラム関連小ネタ集

特に取り上げるほどではないと考えて書き込みませんでしたが,今月も,
トラム関連のスペイン語の記事は豊富にありました.このまま埋もれて
しまうのも勿体なく,紹介したことのある街の話題を中心に,書き残して
おくことにしました.

アリカンテ(Alicante)

スペイン国内全ての地下鉄(メトロ)と路面電車(トラム)の中で,2番目に
高い表定速度,時速48キロを誇るトラムトレインL1が走り始めて間もなく
1か月が経ちますが,L1を含むアリカンテのTRAMの運行状況は,今月に
限っては必ずしも順調ではなかったようです.

まず,Vossloh製トラムトレインが,導入後2度目の脱線を起こします.
幸いにも車庫に出入する回送電車でしたので,けが人は出ていません.
その後も,架線事故があったり,沿線で陥没があったりと,運行に支障が
出ることが絶えませんでした.それに,何もないのに遅れることが多く,
原因は列車保安装置ATPの設定ミスにあることが判明します.設定されて
いる制限速度よりも,車上側では低い速度が表示されていたようです.
少しの遅れでも,乗換えが必要な乗客にとっては,30分に一本しか走ら
ない電車を逃すことで目的地への到着がさらに遅れることを意味します.
これも不満を大きくしました.

一方,アリカンテ側のTRAMの終点にある中央市場(Mercado Central)で,
市場の買い物客にトラムの乗車券を提供しようという話が出ていることを
紹介する記事もあります.費用は販売店側の負担になる見込みですが,
安く卸してもらえるのかもしれません.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
回送電車の脱線事故の記事(小さな画像付き):
18 de agosto de 2007 Descarrila un tranvía vacío en las cercanías
de los talleres
(La Verdad ニュースへのリンク)
保安装置の設定ミスがあったことを報じる記事:
25/08/2007 Los desajustes en el sistema de frenado causan retrasos
en el Tram
(El País ニュースへのリンク)
街中の市場の買い物客にトラムの乗車券を進呈しようという話:
29 de agosto de 2007 Los vendedores del Mercado regalarán billetes
para el tranvía
(La Verdad ニュースへのリンク)

アリカンテ関連 直近の過去ログ:
2007/8/01 【アリカンテ】トラムトレイン100km/h走行


ムルシア(Murcia)

現在,2キロ弱の市電の実験線を開設し,実際に乗客を無料で乗せて本格
展開する際の情報を収集している段階のムルシアでは今月,ムルシア市が
将来の路線構想を明らかにしています.
それによれば,まずムルシアからみて北西にあたるMolina de Seguraと,
西側のAlcantarillaへの路線が検討されます.これで年4百万人の利用が
見込まれるとか.本格的に路線を展開させた暁には,運賃は1ユーロか
1.5ユーロになると考えられています.
約29キロの路線で,トラム建設にはキロ当たり1千万ユーロ必要とみられ
ていることから,予算は3億ユーロになりそうだとのことです.

8 de agosto de 2007 El futuro tranvía metropolitano de Murcia
trasladará a 4 millones de pasajeros cada año

8 de agosto de 2007 La inversión global superará los 300 millones
de euros

(La Verdad ニュースへのリンク)
下段の記事に掲載されている画像は,アリカンテのものです.

5月から7月までの3か月間では,一日平均3千人を超える利用があったそう
です.運賃無料で乗車券の販売もありませんが,どうやって人数を数えて
いるかと言えば,車内で配られる整理券(券面にbillete sencilloとあり
ますので,直訳は仮の切符)の配布枚数を数えているのではないかと思わ
れます.これには日付とその日の通し番号が入っています.

この先はやや利用客が落ちろと予測されているらしく,トラムの運行会社
(empresa concesionaria)のTranvimurは,保守間合いをとるためなのか,
ピーク時の運転間隔を9分から11分に落とすと発表しています.
29 de agosto de 2007 Tranvimur ejecuta trabajos de mantenimiento
para garantizar el buen funcionamiento del transporte

(La Opinión de Murcia ニュースへのリンク)

ムルシア関連 直近の過去ログ:
2007/4/30 【ムルシア】トラム営業開始は5/02から


セビリア(Sevilla)

暫定的に使用する4本目の車両も現地入りして,車両の用意は整いました
が,これまでの試験走行で明らかになっている,車輪とレールの摩擦で
生じる騒音を軽減するために,今月中は全線のレールにやすりを掛ける
作業(lijado)が行われている模様です.これはグラインダーの手配がつか
なかったために,2か月遅れているようで,その他にもゲル状の物質を
軌道?の横に挿入することなどにより,73デシベル(最高は89.7デシベル)
から,55デシベルにまで騒音を抑えこもうとしています.
18 de Agosto de 2007 Tussam lijará los raíles del tranvía a final
de mes para reducir el ruido

(Diario de Sevilla ニュースへのリンク)
しかし,メトロセントロ(MetroCentro)には振動問題もあります.

下は,車両故障の時にも力を発揮する,ウニモグが公開されたという話
です.セビージャ市の公式サイトが出しているもので,画像もあります.
(14/08/2007) Presentado vehículo de reparaciones del Metro_Centro
adquirido por Tussam

(Ayuntamiento de Sevilla へのリンク)
同時に,市はメトロセントロの停留所にあわせて,バス停を移動すると
発表しています.路面電車のメトロセントロをバス路線網の一画に組み
込むことになります.この記事によれば,ウニモグ(Unimog)のお値段は
23万ユーロだそうです.
14.08.2007 Trasladarán todas las paradas de autobús de Puerta
Jerez al Prado
(20 minutos ニュースへのリンク)

セビリア関連 直近の過去ログ:
2007/6/30 【セビリア】メトロセントロ9/17開業報道出る
7月初めの時点で9/24開業との話がありましたが,このまま予定通りに
開業しても,直ちに営業開始で一般客が乗れるわけではなさそうです.


パルマ(Palma)

4月に暫定開業したマヨルカ島のメトロ(Metro de Palma)が,先週の豪雨
により地下区間が冠水し,選挙を睨んで開業を早まったのではないかとの
批判が出ていました.翌日には運転を再開しましたが,被害の著しかった
Son Fuster Vell駅だけは通過し,同駅は一週間たった今週になってから
ようやく営業を再開しています.

その他に,スペイン語の報道は見つけられなかったのですが,ドイツ語の
週刊新聞が,パルマ市の中心部に路面電車構想があることを明らかにして
います.2路線あるようで,Plaça de EspanyaからArenalまでと,もう
一路線はSanta Ponça方面へ向かうようです.
23. bis 29. August 2007 Straßenbahn kehrt zurück
(Mallorca Magazin ニュースへのリンク)

パルマ関連 直近の過去ログ :
2007/4/11 【パルマ】マヨルカ島でフル規格の地下鉄開業


最後に番外で,マドリッドのライトメトロ(Metro Ligero)車両シタディス
(Citadis)が,出張でスウェーデンのストックホルムを走っています.
2007-08-20 Madridbesök på Djurgårdslinjen
(Svenska Spårvägssällskapet へのリンク)
これが市内の路面電車7番の助っ人として行っただけか,将来の布石か
何かかどうかはよく判りません.運転は9/01までのようで,リンク先も
9/02には消滅するかもしれません.

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.
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2007年08月29日

【TransLink】共通カード型乗車券9/17始動

ベイエリアの交通機関共通パスの話が出たのは少なくとも十年以上前で,
実験が開始されてからも5年が過ぎていますが,ようやくTransLinkは,
とりあえず2社だけで9/17から公式にスタートします.

TransLinkとは,非接触式カード型のプリペイド乗車券です.
Wikipediaによれば,カード自体には接触式の機能もあるようです.

乗降時にカードをリーダーにかざすだけで済み,残高が$10を切ったり,
パスの場合には有効期限が切れた時点で,クレジットカードや銀行口座
から自動的に積み増しするような選択肢もあれば,駅の専用機だけでなく
オンラインでも積み増し可能とのこと.リーダにカードをかざす動作を
Tagと呼んでいるようです.

ベイエリアの交通機関のほぼ全て,参加26社で使えるようになるのは,
現時点で2010年の予定で,導入は利用者にとって便利になるばかりでは
なく,事業者にとっても現金取引を減らす利点があります.現金を集めて
回ったり,それを数えたり警備をつけなければならないことに回す経費を
節減できるのです.
もっとも,TransLink導入に掛かる経費は,当初見込みの2500万ドルから
1億3千万ドルに膨れ上がっていました.地元だけでなく州や連邦からも
助成金が出ています.

今回TransLinkが正式に先行導入されるのは,現在テストが行われている
AC Transitと,Golden Gate Transitの2社です.
前者はオークランドを中心とした地域で路線バス事業を展開し,一部が
ベイブリッジを渡ってサンフランシスコまでやってきます.
後者は,サンフランシスコからゴールデンゲート橋を渡った先にある,
マリン郡(Marin County)などで主に路線バスを走らせています.もちろん
ゴールデンゲートブリッジ(Golden Gate Bridge)を通りサンフランシスコ
にも乗入れているほか,親会社のGolden Gate Districtはフェリーも運行
していて,今回の導入にはフェリー(Golden Gate Ferry)も含まれます.

この2社は,昨年2006年から実験を開始していました.これまで技術的な
問題に何度か遭遇してきましたが,これらを改善して正式利用開始に踏み
切れると判断した模様です.

今後の予定としては,年内にもMuniとBART,Caltrainでも導入することが
期待されています.
MuniとBARTは,2002年から一部でTransLinkの実験を行っていました.
すでにBARTでは全駅にリーダーが装備されていますし,Muniは路面電車の
一部だけだった装備が,年内にバスを含め全車両に行き渡る見込みです.
一旦実験を終了したBARTのリーダーは,正式導入となるまで使用不可です
が,Muniメトロの一部車両に装備されているリーダーは使えるようです.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
August 28, 2007 AC Transit, Golden Gate ferry, bus to adopt
regional transit pass
(San Francisco Chronicle ニュースへのリンク)

使い勝手などは,公式サイトで情報を得られます.TransLink Home

AC Transit (Alameda-Contra Costa Transit District)
Maps & Schedules : All City Map
(AC Transit 公式サイトへのリンク)
Golden Gate Bridge, Highway and Transportation District
Cash Fares and Fare Zone Map
(Golden Gate Transit 公式サイトへのリンク)

2社が正式導入を表明する2週間前,ソフトウェアに不安があるとして,
MuniとBARTの年内導入は難しいのではという記事が出ていました.
August 14, 2007 Glitches, spiraling costs may delay TransLink
expansion
(San Francisco Chronicle ニュースへのリンク)
今でもその不安が払拭されたわけではなさそうです.

余談ですが,今日8/29は今夏初めてのSpare the Air Dayに指定され,
ベイエリアの交通機関は終日(一部は13時まで)運賃無料です.

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.
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2007年08月28日

【Google Transit】ニューヨーク地下鉄も?

先週末の話題になりますが,グーグルマップの機能の一つとして,現在は
ベータ版ながら,二地点間の移動で公共交通機関を利用の際の,乗り場の
位置が地図上に表示され,その脇に時刻や路線名,行先表示,運賃なども
表示される,Google Transitという乗り物検索サービスがあります.
検索可能範囲は限られていますが,現時点では次の地域で可能です.
( )内は事業者名

軌道系交通機関のある米国の地域 :
* Portland (TriMet) 最初はここだけでした
* Bay Area (BART / Bay Area Rapid Transit)
* San Diego (MTS / Metropolitan Transit System)
* Dallas (DART / Dallas Area Rapid Transit)
* Pittsburgh (Port Authority of Allegheny County)
* Las Vegas Monorail 最近加わりました
路線バスが主体の地域 :
* Seattle (King County Metro)
* Eugene (Lane Transit District)
* Burbank (Burbank Bus)
* Humboldt County, California
* Orange County (OCTA / Orange County Transportation Authority)
* Tampa (HART / Hillsborough Area Regional Transit)
* Honolulu (TheBus)
* Duluth (Duluth Transit)
* Reno (RTC RIDE)
* Austin (Capital Metro)
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
Google Transit (Google へのリンク)

日本国内も,2007年4月から可能になっています.Japan (All regional
and national rail networks, domestic airlines and ferries)
2007年4月23日 Google トランジット - 地図を見ながら路線検索
(Google Japan Blog へのリンク)


これに,近い将来ニューヨークの地下鉄(MTA)と,ニュージャージー州の
New Jersey Transitが,加わることになりそうです.
MTA : Metropolitan Transportation Authority
Googleはコメントを控えているものの,MTAとNJ Transitは,Googleと
作業に取り掛かっていることを認めました.
August 24, 2007 Google May Start New York Transit Guide to Boost
Ads (Update2)
(Bloomberg ニュースへのリンク)

ニューヨーク地下鉄とNJトランジットあわせると一日1千万人近い利用が
あることを考えると,乗り物検索は従来以上に利用され,ローカル検索
結果の画面に表示される広告を出す企業が更に増えると期待されたのか,
Googleの株価が上がったとも記されていました.
すでに自前で乗換え検索を行えるシステムを公式サイトに搭載したり,
HopStop.com Inc. のような独自のサービスもありますが,使い慣れた
グーグルで検索する人が多くなるだろうと見られています.
HopStop.comの乗換え検索 Directions : New York

興味深いのは,今年2007年1月にGoogle Transitにデータが加わった,
ミネソタ州ダルース(Duluth)の例です.
ダルースは五大湖のひとつ,スペリオル湖の西端にあります.隣接する
ウィスコンシン州スペリオル(Superior)とツインポーツ(Twin Ports)と
呼ばれる都市圏を形成し,域内の人口は27万5千を数えます.
この地で41台のバスを所有し,ラッシュ時には27路線を運行するDTAは,
Google Transitで経路検索が可能になって以来,利用者数が12%増えた
と言っています.また,時刻などの問合せの電話も減ったそうです.

DTA : Duluth Transit Authority
Routes and Schedules System Map
(DTA 公式サイトへのリンク)

公共交通機関がGoogle Transitにデータを載せるためには,さまざまな
情報をGoogleの指定する仕様に変えなければなりません.また,乗り場の
緯度経度なども求められます.
Google Transit Feed Specification (GTFS) (Google へのリンク)

過去ログにありますが,フロリダ州タンパの時は交通事業者の経費負担は
なく,データ入力は事業者のスタッフが時間外に行っていたそうです.

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

Google Transit 関連 過去ログ :
2006/9/27 【タンパ】Google Transitで経路検索可能に
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2007年08月27日

【Roads and Transit】マリナーズなどが賛成

11月の米国総選挙の際,同時に行われる住民投票の話題が続きますが,
シアトルを中心とする地域でも,ライトレール建設の是非に関わる選択が
行われます.
投票対象となるのは,Roads and Transitと呼ばれる法案で,こちらでも
何度か紹介している,Sound Transitが進めるライトレールの建設などを
含む公共交通機関の整備計画ST2と,RTIDが進める道路整備計画です.
この2つがセットになって総額178億ドルの大プロジェクトになりますが,
今後,急増する地域内の移動需要に応えるため,売上税と自動車税を投入
するこの計画を始動させるべきかどうか,投票日は11/06です.
ST2 : Sound Transit Phase 2
RTID : Regional Transportation Investment District

Sound Transitは,シアトルのあるキング郡(King County),タコマのある
ピアース郡(Pierce County)と,スノホミッシュ郡(Snohomish County)の
3郡の議会により設立され,その地域の公共交通を運営しています.
ST2は,Roads and Transitの半分以上の108億ドル分を占め,建設中の
ライトレールを,約50マイル(約80キロ)にまで拡大しようとしています.

Roads and Transitの可決を目指し活動しているKeep Washington Rolling
には,計画が始動すれば関与する建設会社や利益を得る不動産関係など
から,多くの資金が集まってきているそうで,それを元手にRoads and
Transit賛成票を増やしていくようです.

この週末,その団体にマイクロソフトとシアトル・マリナーズ(Seattle
Mariners)も,資金を出したという記事が流れました.
マイクロソフトは20万ドル,マリナーズは7万5千ドルです.十日ほど前
まで34万ドル少々だったのが,この大口の2社などからのおかげもあり,
今や69万ドルに達したとのことです.

ワシントン州の州政府機関であるPublic Disclosure Commissionには,
Roads and Transitに反対活動を行う団体は現時点では申請されていない
とのことです.今後もないとは限りませんが,賛成派がこれだけ資金を
集めてしまったあとでは,対抗するのが困難な状況になりました.

マイクロソフトはコメントを避けましたが,Roads and Transit賛成の
立場を明らかにしたマリナーズ球団は,遠路はるばる(キング郡以外から)
球場にやってくる観客も多く,1時間以上要している現状を改善したい
からと説明しています.特定の計画を支持しているわけではありません
が,地域交通全般が良くなることを望んでいるそうです.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
Associated Pressの記事
Aug 26, 2007 Microsoft, Mariners boost roads, transit campaign
(KOMO-TV ニュースへのリンク)

Roads and Transitは,ライトレールと道路の建設がセットです.
どちらか片方には賛成でも,もう片方には断固反対したいというような
有権者が,この組合せ法案に賛成票を投じるかどうか,抱き合わせが吉と
出るか凶と出るかは11月まで判りませんが,シアトルの運輸局(Seattle
Department of Transportation)が,200人の通勤者が全員自動車で通りを
走った場合は,175台の車が2ブロック分を占拠してしまうのに対して,
ライトレールなら車線半分の面積で済むというパフォーマンスを,実際に
シアトルの通りにエキストラを配して撮影したという話も,この週末には
ありました.
August 26, 2007 Downtown Seattle streets closed for mass transit
photo shoot
(KING 5 News ニュースへのリンク)
映像もあります.

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

Sound Transit 2 関連 過去ログ :
2007/4/28 【Sound Transit】ST2最終案まとまり投票へ
2007/4/02 【タコマ】セントラルリンクとの接続早まるか
2007/1/15 【Sound Transit】投票に向け計画煮詰まる
2006/7/17 【Sound Transit】ST2詳細明らかに
2006/3/10 【シアトル】"Sound Transit 2"一年遅れに
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2007年08月26日

【ストラスブール】祝 延長で5日間の運賃無料

ストラスブール(Strasbourg)のトラムが,7年振りに路線を延長します.
ニースでも問題になっているDUPの関係で,一時期工事が差し止められて
いましたが,2005年11月に工事が再開され,これから2008年夏にかけて,
三段階で路線網が成長していきます.
DUP : Déclaration d'Utilité Publique

その第一弾は,8/25から運転を開始しました.週が開ける8/27からは関連
する路線バスも再編されて,8/29までの5日間は,一部を除いたCTS全線が
祝賀ムードのなかで,お試し期間として無料開放されています.
CTS : Compagnie des transports strasbourgeois

今回,トラムはC系統とD系統が延長され,E系統が新設されます.距離に
して13.5キロとなっていますが,ストラスブールではフランスの鉄軌道
トラムには珍しく,複数の系統が重複して走る区間があるため,実際には
6キロ前後です.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
路線図をまとめてみました.四角い枠内が8/25に延長された区間です.
Strasbourg2007Aug.png
資料を基に構成しましたが,正確ではないかもしれません.
トラムトレインF系統は,想像図になります.

公式案内 : 25/27 Août : Nouveau Réseau Bus - Tram
2007-2008年に拡張する路線計画 : CTS | reseau 2007
(CTS 公式サイトへのリンク)

延長開業と,これまでの歴史を簡単に振り返る記事 :
août 25, 2007 Strasbourg étend son tramway et revendique
la première place
(Reuters.fr ニュースへのリンク)

数日前から記事が出ていました.どの記事も,2008年には路線長53.7キロ
にまで達し,リヨンを抜いてフランス最長のトラム網となると書かれて
いますが,前述の通り,重複して走る区間を二重に計算していますので,
軌道キロはもっと短いはずです.また,フランス初の環状ルート完成とも
ありますが,これも先例があるでしょう.それでも路線数5というのは,
フランス随一です.
22/08/2007 Strasbourg se prépare à inaugurer l'extension de son
réseau de tramway
(Moniteur-Expert ニュースへのリンク)
22 août 2007 Le tram en chiffres
(Union Pour Strasbourg ニュースへのリンク)

他にも多数ありますが,下段の記事には,興味深い数字が並んでいます.
13,1,12,390,1000
13: 延長される路線距離をキロメートルで表しています.
1: 地域内ならどこに行くにも最大1回の乗換えで到達できるようになる
ことを示します.新たにNeudorf地区へトラムが乗入れました.
トラム同士の乗換え拠点は中心部の4か所になり,これまで4線が終結して
いた(写真で紹介されることも多い)Homme de Ferの混雑緩和を図ります.
12: 新しく掛けられた橋の数だそうで,水運で栄えた水の都と言われる
だけのことはあります.
390: 総予算3億9千万ユーロで,このうち1億5千万ユーロが設備関係,
1億1千万ユーロが追加投入された41本の低床車(シタディス)の代金です.
全長の長いシタディス導入で,輸送力が82%アップするとか.
1000: 2001年以来,トラム延長に関して開催された集会の数だそうです.

今後の予定としては,2007年11月末(2008年1月という記事もあり)には,
B線がOstwald Hôtel de Villeまで延長されるのと,E線が欧州議会などの
前を通り,Robertsau Boecklinまで伸びる予定です.
残る建設中の路線は,B線のLingolsheim Tiergaertelまでですが,これは
2008年5月か6月になる見込みだそうで,これが完成した時点で,整備が
必要とされた地区(Neudorf,Neuhof,Robertsau,Ostwald,Lingolsheim)
全てにトラムが到達することになります.
また,バスもこれまでより6%規模が拡大されますが,その路線バスとだけ
ではなく,鉄道線(SNCF/TER)とも接続を改善し,駐車場や駐輪場を設ける
停留所を増やすとのことです.

路線拡大と車両増備で,車庫も新設されました.C線の途中Kibitzenauに
トラム35本とバス124台を収容する車庫が完成しています.それまでの
車庫を補完するだけでなく,地域の再生につながるようです.
また,この車庫では,太陽光発電などの再生可能なエネルギーを積極的に
取り入れています.
24 août 2007 Eco-dépôt
(Union Pour Strasbourg ニュースへのリンク)

一連の路線が開通したその次は,トラムトレインの運転開始が計画されて
いますが,その時期を2009年と記した記事もありました.

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2007年08月24日

【シャーロット】トランジット税の是非

ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte)では,同市を含むメクレン
バーグ郡(Mecklenburg County)内の住民に課されている,売上税7.25%の
うちの公共交通機関整備のために後に追加された0.5%分のトランジット税
(交通税)の是非を巡って,11月に住民投票が予定されています.1998年に
やはり住民投票で可決され採用されたこの税が,再び住民の選択に委ね
られる経緯は,こちらでも簡単に触れてきました.投票まで2か月余りと
なり,地元ではこの夏この話題が注目を集めている模様です.

シャーロット都市圏(Charlotte metropolitan area)の人口は年々増え
続け,2000年には人口133万だったものが,2006年には同158万に,同じ
ペースで増加が続くと,2014年には200万人を突破する勢いだそうです.
これだけの人の移動を支えるのに,ライトレールやバスは不可欠とする
0.5%分の交通税(transit tax)存続派と,大金を掛けて公共交通を整備
しても,渋滞は減らないと考える交通税廃止派の戦いです.

メディアの中には,交通税(transit tax)の特集ページをインターネット
上に開設するところも出てきました.有権者各自が存廃どちらに投じるか
決める前に,その論点を整理することができます.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
地元の有力紙Charlotte Observerは,交通税の特集ページをサイト上に
設置しました. Special Reports Transit Tax

とかく,色々と問題が持ち上がったライトレール,LYNXブルーラインが
注目されがちですし,交通税廃止を求めて住民投票に持ち込んだ団体も,
その計画廃止を目指していますが,建設費の多くは連邦政府からの補助
金で賄われており,今年2007年には6900万ドルになるとみられる交通税
からの税収の65%は,CATSが運行する路線バスに流れていることから,
交通税の廃止は,現在の路線バス網に大きな影響を与えます.
CATS : Charlotte Area Transit System
Aug. 23, 2007 What neither side is saying about transit
(Charlotte Observer ニュースへのリンク)

そのCATSが運行する路線バスに関して,1998年の交通税の導入が与えた
影響が,わかりやすく紹介されています.
Aug. 19, 2007 How well is Charlotte's bus system working?
(Charlotte Observer ニュースへのリンク)
CATSの路線バスは,シャーロット都市圏の人口増と1998年の交通税導入に
裏づけられた路線拡大で,利用者を破竹の勢いで増やしていきました.
乗車率で66%増,累計800万回の新規利用がもたらされ,これだけの増加は
米国ではあまりないとされています.

路線網拡大は,それまで対象としていた自動車を持てず路線バスしか移動
手段がない客層だけではなく,自動車を所有していても,あえて経済的な
理由や環境への配慮からバス通勤を選択するchoice ridersと呼ばれる
客層の比率を増やしていきます.交通税導入前は10%だったchoice riders
は,今日では40%にまで増えているとみられています.

しかし,彼ら(choice riders)を引き付けるための増便や,郊外への路線
拡大は,経費増加と引き換えでした.運行予算は2510万ドルから8530万
ドルにまで増えていきます.更に1マイルあたりの平均利用者数が減り,
運賃収入で賄える経費の割合も27%から17%前後に落ち込んで,いずれも
全米平均を下回る結果となりました.これらが批判の的になっています.

それでも,交通税廃止による路線バスの縮小は,以前のようなバスしか
移動手段のない人たちを主に乗せて走る規模に戻り,choice ridersが
自動車通勤に戻ることを意味しています.

一方で,もしも交通税が廃止される場合,財産税(property tax)の増税が
穴埋めとして検討されています.
今週も,市議会議員らから構成される交通税支持派のグループが活動を
開始して,前にも似たような話がありましたが,交通税廃止後の予測を
繰り返しています.
たとえば,年収5万7千ドルで課税価格16万ドルの家に住む世帯は,現在
年間$39の交通税を支払っているとされますが,交通税が廃止されると,
年間$58を財産税の増税という形で支払うことになります.この金額は,
ライトレールの運行が減便され,路線バス網が縮小される場合のもので,
ライトレールを計画通りに運行し,路線バス網を現状維持するとなると,
財産税の増加分は$171になるというものです.交通税が存続されれば,
$39で済みます.ただし,$39の中には食料品やガソリン代からの分は,
含まれていません.
交通税支持派のキャンペーン開始を伝える記事 :
Aug. 23, 2007 Residents focus of pro-transit campaign
(Charlotte Observer ニュースへのリンク)

同紙などが行った世論調査では,郡内の住民のうち52%が交通税継続を
支持,45%が撤廃に投じるとの結果が出ました.人種,年齢層,学歴,
支持政党ごとの存廃支持の割合なども記されています.
Aug. 23, 2007 Fight over transit tax close, poll shows
(Charlotte Observer ニュースへのリンク)

審判が下されるのは11/06,ライトレールLynxの開業は11/26の予定です.
それらを全て見届けて,公共交通畑一筋に,交通税導入直後からCATSで
陣頭指揮をとってきたCEOが,12/21に引退するとの報道もありました.

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

シャーロットのトランジット税 関連過去ログ :
2007/3/28 LRT計画反対署名にCATS反撃
2007/4/09 集まったLRT反対署名の疑問
2007/7/30 ライトレール開業11/26に
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2007年08月23日

【ミネアポリス】再建する橋は鉄道対応か

ミネソタ州ミネアポリス近郊で崩落した高速道路橋の再建に際し,将来を
見越してライトレールが走れるようにすると州知事が発表していたにも
かかわらず,設計に要する時間の問題と補助金対象外となる資金面の二点
から,副知事が進言し州運輸省が出した最初の再建案では,ライトレール
非対応になっていた話がありました.(前回の投稿後に追記もあります)
2007/8/13 再建橋にライトレールなし?

先週は,週明けから全米でこの話題に触れた報道が数多くありました.
崩壊した橋より左右に1車線ずつ広い,合計10車線の橋とする州運輸省の
再建案が出されましたが,追加される車線はバス専用レーンを想定して
いて,ライトレールが走れる設計にはなっていませんでした.

これに対し,再建は急がれるものの,将来を見据えてバスよりも輸送力を
高められる鉄道も走れる強度を持つべきとする,ミネアポリスの市長を
はじめとするグループが,州案への反対姿勢を明確にしていきます.
州運輸省は,高速道路計画で地方自治体の承認(municipal consent)なし
には計画を進められないと,州法で定められています.このケースでは,
ミネアポリス市議会の承認が必要になるということです.しかし,州法は
反対理由を限定していて,州はライトレール非対応だから反対では該当
しないと考え,市との間で一時は法解釈を巡る争いに発展する気配さえ
漂いました.

今は,この地域の大動脈と言える高速道路が,当分の間は通行止めが続く
という非常事態です.経済に悪影響も出始めているとも言われています.
そうしたなか,州知事は先週の金曜日に再び見解を示しました.
それは,ミネソタ州が2千万ドルか3千万ドルを負担してでも,鉄道走行に
耐えられるような強度を持つ橋を再建しようというものでした.再建には
連邦政府からも多額の補助金が出ますが,鉄道走行に対応する追加経費
まではカバーしません.不足分は地元が負担する必要があるのです.

このような紆余曲折がありましたが,最終的には最初のライトレール対応
に戻ったというわけです.

なお,再建する橋に走らせようとするライトレールは,ミネアポリス市と
しては,計画中のセントラルコリドー(Central Corridor)を考えていた
ようですが,州知事が鉄道対応を表明する前に考えを改め,路線を特定
しないことにしていました.
州知事の考えでは,セントラルコリドーではなく,計画段階にもなって
いない未知の路線を想定しています.
実際に地図を見れば一目瞭然ですが,再建される橋が現在と同じ位置で
あれば,セントラルコリドーがI-35Wを通るのは遠回りです.
同じミシシッピ川を渡るワシントンアベニュー橋(Washington Avenue
Bridge)に改修の必要があると明らかになったばかりですが,遠回りは
余計な経費を招き,開業後の運転時間も長くしてしまいます.

このように,流れは再びライトレールに対応する設計に傾いていますが,
8/23に開催された委員会の席では,反対派も黙っていません.まだ波乱が
あるのかもしれません.

時系列順に,代表的な記事を並べました.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
再建案がライトレール非対応だったため,市長らが反対 :
08/16/2007 Minneapolis making stand on bridge design
(Pioneer Press ニュースへのリンク)
州の負担が増えても,再建する橋はライトレール対応にするとの見解を,
州知事が明らかに :
August 17, 2007 In about-face, Pawlenty backs an LRT-ready bridge
(Star Tribune ニュースへのリンク)
州知事が再建する橋はライトレールが走れる設計にすると改めて発表 :
August 21, 2007 President declares disaster for I-35W bridge
(Pioneer Press ニュースへのリンク)
'Train to Nowhere 2'? と言う反論が飛び出した,交通委員会 :
August 22, 2007 Bridge plan sets off squabble over transit
(Star Tribune ニュースへのリンク)
2004年にこの地で開業したライトレールのHiawatha Lineを,Train to
Nowhereと呼ぶ人の発言です.

計画中のセントラルコリドー(Central Corridor)のルート推測(青線)と,
州間ハイウェイ35Wの位置関係 :
Central Corridor / Washington Avenue Bridge and I-35W
(Google Mapsへのリンク) マーカーの位置に意味はありません

2014年完成を目指すセントラルコリドーのルートなど,公式資料 :
Central Corridor Light Rail Transit (LRT)
(Metropolitan Council へのリンク)

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

関連過去ログ : 2007/8/13 再建橋にライトレールなし?
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2007年08月22日

【チューリッヒ】潤滑剤で騒音と磨耗を低減

路面電車の騒音は頭痛の種ですが,チューリッヒのVBZは,地上設置型の
潤滑剤吹き付け装置(Schmierstellen)で,曲線できーきーときしむ音を
減らすことに成功しているという報道がありました.
VBZ : Verkehrsbetriebe Zürich

装置は,一台が約4万スイスフランするドイツ製で,電車接近をセンサで
感知してから作動するタイプです.製造元のMoklansaのサイトによれば,
トラム用の溝付きレールでもピンポイントで正確にグリースを吹き付ける
ことができるようです.また,グリースは粘着性が高いため,ブレーキに
悪影響を与えることもありません.チューリヒのような気象条件下でも,
この特性を維持できることが,Moklansa社製品が選ばれた理由でした.

2003年より導入を開始したこのシステムは,キシリ音の発生しやすいと
される場所のうち,現在は三分の二を網羅していて,94か所を数えます.
将来は150か所に増やす予定ですが,高価な装置でもあるため,導入は
レール交換などとあわせて行われるようです.

この装置により効率よくレールに潤滑剤を吹き付けできるようになり,
騒音への苦情も減ってきていることから,従来の途油に必要だった2両の
オレンジ色の専用車両(Schmierfahrzeuge)は,昨年末お役ご免となった
そうです.この装置はベルンやバーゼルなどでも導入されそうです.

潤滑剤は,レールと車輪の接触からくる不快な騒音を減らすだけでなく,
レールの磨耗軽減にも効果があります.従来方式と比べて10%から20%も
磨耗度が減っているとのことです.
以前,導入が進む低床車のコブラ(Cobra)ことBe 5/6が,一輪あたりに
掛かる重量の大きさと車輪径が小さいことから,車輪の磨耗が在来車両に
比べて高いという問題が指摘されていました.線路の磨耗も促進していま
したが,潤滑剤による磨耗軽減効果により,これが相殺できる模様です.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
21. August 2007 Auf dem Tramnetz ist es leiser geworden
(Neue Zürcher Zeitung ニュースへのリンク)

レール潤滑システム概要 : Schienenschmiersystem moklansa E3S
この先に英語版情報のPDFファイルへのリンクあり : Download
(moklansa GmbH 公式サイトへのリンク)

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

チューリッヒ市電 関連過去ログ :
2007/3/15 コブラ量産車で車輪問題
この時には,コブラ(Cobra)の量産車も操舵リンクが採用されているかの
ように書いていますが,今回のNZZの記事によれば,独立回転車輪である
ことに変わりないものの,電子制御で車輪の向きを適正化しているように
読めました.先行試作車と量産車では,操舵方式にも変更があったのかも
しれません.
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2007年08月21日

【NY】どうなる市長のロードプライシング案

米国連邦運輸省が,UPAプログラムを通じて5つの都市圏に補助金を出す
という話を前回ご紹介しましたが,そのうちのニューヨーク市について,
関連情報を集めてみました.
UPA : Urban Partnership Agreement
交通混雑を緩和する4つのTが,キーワードです.
Tolling : ロードプライシング(congestion pricing)など道路課金
Transit : エキスプレスバスまたはBRTの導入
Telecommuting
Technology & operations

ニューヨーク市が獲得できる補助金は,3億5450万ドルです.しかし,
これを受け取るには条件がありました.ニューヨーク市の市長が提案する
米国で初の広範なロードプライシング(congestion pricing)の導入か,
あるいは,それを承認していない市議会や州議会が提案しようとしている
代替案のどちらかが,2008年3月までに実施される場合に限るという条件
で,課せられた目標は,自動車の走行距離を6.3%減らすことです.

市長の提案しているロードプライシングとは,マンハッタン86丁目以南へ
平日の12時間に乗入れる自動車に対し1台8ドル,トラックに一台21ドルを
課金しようとするもので,ロンドンでの導入例を参考にしたものです.

ニューヨーク州の州議会と市議会は,これをまだ承認していません.
マンハッタンから遠く,地下鉄やバスの便が悪く低所得者の多い区だけ
ではなく,富裕層の住む地域の議員からも反対の声が挙がっています.
彼らは市長の案を徹底的に見直すか,あるいは別の案を練っているところ
らしく,専任のメンバーがまもなく選出される模様です.
検討中の対策の中には,ピーク時の地下鉄運賃値下げや,閑散時間帯に
マンハッタンに出入する橋やトンネルの通行料を安くすることなども含ま
れているようです.
もっとも,地下鉄は降雨で一部が冠水して運転が止まり大混乱した記憶も
新しい上に,老朽化した橋の問題はニューヨークも無縁でなく,同市の
交通社会基盤は心配の種にもなっているところです.

そこへ,今回の補助金獲得というニュースが先週届いたのでした.
ロードプライシング導入を推す市長にとって朗報かと思われたのですが,
その内訳をみる限りでは,どうもそう簡単にはいかないようです.
ロードプライシングの導入に市は2億2300万ドル必要と見積もっていて,
そのうち1億7900万ドルを連邦に求めていましたが,今回の補助金は全額
出た場合でも,1040万ドルしか割当がなかったのです.

3億5450万ドルの用途別内訳は,次の通りでした.
1040万ドル : ロードプライシング導入
1億1270万ドル : 5区間(各区1路線のテスト版)のBRT建設
1億8400万ドル : ジャマイカ地区などのバスと関連設備への投資
2930万ドル : 223か所の歩道ならびに交差点信号機の改善
1580万ドル : フェリー増発など
残りは調査費という名目です.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
ニューヨーク市の連邦補助金獲得を伝える一連の記事 :
August 16, 2007 Feds award city $354M for congestion plan
(Queens Courier ニュースへのリンク)
August 15, 2007 New York City's car fee plan wins $354m in US
transit aid
(Boston Globe ニュースへのリンク)
August 15, 2007 New York to Get US Traffic Aid, but With Catch
(New York Times ニュースへのリンク)

86丁目は,セントラルパークの縦半分ぐらいの位置にあたります.
ここから南への自動車乗り入れに課金しようと市長は提案しています.
Manhattan south of 86th Street (Google Maps へのリンク)
これは課金対象となる道路の範囲を推測で示しただけで,正確ではあり
ませんし,マーカーの位置には何の意味もありません.


各区に1つずつ,計5つの路線が検討されているBRTの計画概要ページ :
MTA Planning | NYC Bus Rapid Transit Project
(MTA 公式サイトへのリンク)
MTA : Metropolitan Transportation Authority
このページからリンクの張られているProject Updateへ進むと,路線図
へのリンクがあります.

UPAに関して詳しく知りたい場合は,公式サイトを訪れてください.
Moving the American Economy: National Strategy to Reduce Congestion
Urban Partnership Agreements - FightGridlockNow.gov
(U.S. Department of Transportation へのリンク)

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

その他の米国北東部の話題 :
フィラデルフィアの乗継割引廃止問題は,書簡の存在が明らかになった
差出人の連邦機関(FTA)がこの一件から手を引いたものの,民事裁判所の
判事は,当面継続するようにSEPTAに命じました.先週までの話です.
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2007年08月19日

【LA】鉄道建設にロードプライシング検討中

L.A.地区を縦横に走る地下鉄やライトレール,2004年にMTAが作成した
らしい構想図が先日LAタイムス紙ウェブサイト版に掲載されていました.
MTA : Los Angeles County Metropolitan Transportation Authority

しかし,現状では実現はとても無理な話です.MTAが回せる資金は2030年
までに40億ドルとされていますが,必要なのは300億ドルです.
世論調査によれば,交通計画への増資を目的とした増税は市民に支持され
そうになく,MTAではロードプライシング(congestion pricing)導入を
研究し始めました.混雑緩和目的の道路課金は,すでにシンガポールや
ロンドンなどでは実施されて知られていますが,米国ではまだそれほど
馴染みがありません.

それでも米国の現政権は,ロードプライシングなどを軸としてBRTなどを
整備する計画に対して補助金を出す,UPAsというブログラムを2006年に
制定し,道路混雑緩和に立ち向かう国家的な戦略の一つと位置付けて,
補助金が欲しい主要都市圏に計画を提出させていました.
BRT : Bus Rapid Transit (バス ラピッド トランジット)
UPAs : Urban partnership agreements (Urban Partnership program)
先ごろ,UPAsにより連邦補助金を得る最初の5都市圏が決まったという
報道もありました.混雑緩和に役立ちそうな計画を出し,総額12億ドルの
補助金を受け取るのは,マイアミ,ミネアポリス地域,ニューヨーク,
サンフランシスコ,シアトル地域です.
26の候補の中から選ばれた5つの計画は,未確認ですが,いずれもロード
プライシング(congestion pricing)とBRTが含まれるはずです.ただし,
この対象はあくまでもバス(BRT)だけで,鉄道は対象外です.

一方,ロサンゼルス市議会では,ロサンゼルス国際空港(LAX)に出入する
自動車に課金する,ロードプライシングを検討するとの報道もあります.
昨年は2560万台以上の車がLAXの空港ターミナルにやってきています.
ETCなどを利用して停車させることなく,これらの車両から料金を徴収
しようというものです.カルフォルニア州では,FasTrakと呼ばれるETC
システムがあり,ベイエリアの橋への導入がよく知られていますが,LA
周辺でも一部の有料道路やHOTレーンに導入されています.
ETC : electronic toll collection (日本のETCとほぼ同じ仕組み)
HOT : High-occupancy toll,本来は規定の人数が乗車している車両のみ
通行が許されるHOV専用レーンを,規定人数未満の乗車でも代金を払う
ことで走れるようにする仕組み.

HOV : high-occupancy vehicles (carpools)

LAXに出入する車両に課金して得られる資金は,ユニオン駅と空港を結ぶ
高速バスFlyAwayの増発に充てたり,ライトレールのMetro Railグリーン
ライン(Green Line)のLAX乗入れ計画を推進するために使うつもりです.
これまでの案では,地元(ロサンゼルス郡)以外の車両からは,より高い
料金を課すことが考えられています.なお,導入された際の無料の代替
手段として,駐車場から無人のピープルムーバーが運転されます.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
資金不足のため実現できないLA地区の鉄道線リストも載る記事 :
August 17, 2007 MTA long on projects, but short on funds
(The Los Angeles Times ニュースへのリンク)

5都市がUrban Partnership programにより補助金を得るとの公式発表 :
August 14, 2007 U.S. Secretary of Transportation Names Five
Communities to Receive Funding to Help Fight Traffic Congestion

(United States Department of Transportation 公式サイトへのリンク)

ロサンゼルス国際空港(Los Angeles World Airports / LAX)に,ロード
プライシング(congestion pricing)導入を検討中と報じる記事 :
August 18, 2007 City To Study Toll Feasibility At LAX
(NBC4 Los Angeles ニュースへのリンク)
August 18, 2007 LA council to study driver fee at airport
(Daily Breeze ニュースへのリンク)

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

関連過去ログ : 2006/6/05 【LAX】LRTグリーンライン乗入れは如何に?
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2007年08月18日

【ポートランド】延長開業と東部の市電予算

ポートランドのストリートカー(Portland Streetcar)が,予定通り8/17に
約0.6マイル(1キロ弱)南方に延長されました.新しい終点は,SW Lowell
and Bond Streetsとなります.これでこの市電は約8マイル(13キロ弱)に
まで全長を伸ばし,平日は1万人前後の利用があるほどになりました.

ロープウェイ(Portland Aerial Tram)との乗換え地から先は,1ブロック
離れた通りを単線で走り,南端のLowell streetでループする形になり,
2年ぶりに2001年開業時と同じエンド交換なしの運行に戻ります.
この週末は,ストリートカーは無料運賃ゾーン範囲外も運賃無料になり,
ロープウェイも同時に無料開放されるそうです.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
ストリートカー延長開業の報道 :
8/17/2007 Streetcar Expands Service To South Waterfront
(KOIN News 6 Portland ニュースへのリンク)
August 17, 2007 Streetcar Opens South Waterfront Loop
(Oregon Public Broadcasting ニュースへのリンク)

新しい路線図 : Streetcar Map
(Portland Streetcar Inc. 公式サイトへのリンク)

ポートランドの路面電車でループと言えば,今走っているウィラメット川
(Willamette River)の西側だけでなく,東側の地区にも延長させる計画
(Eastside Streetcar Loop Project)があります.
その建設に際して,連邦からの補助金を受け取るための申請手続き締切が
3週間近くに迫り,今週は色々と動きがありました.

この計画では,市電の開通とその後の投資効果で全米にその名を知られる
ことになったパール地区から東方に進み,Amtrakが発着するユニオン駅
(Union Station)のホームにも架かっているブロードウェイ橋(Broadway
Bridge)でウィラメット川を越え,東岸に入ってから南下.ロイド地区
(Lloyd District)ではライトレールMAXと交差して,その後は1ブロック
離れた南北の2本の通り(Martin Luther King Jr. Boulevardと,Grand
Avenue)をそれぞれ単線で走り,当面はオレゴン科学産業博物館(Oregon
Museum of Science and Industry)までを結ぶものになりそうです.
正式ルートはまだ決まっていません.その後,他にも案がありますが,
再びウィラメット川を渡って西岸の市電路線と接続し,最終的にループ
路線を形成するという構想です.

博物館までの考えられるルートをGoogle Mapsで描いてみました.
Get directions NW Lovejoy St & NW 10th Ave to OMSI
(Google Maps へのリンク)

見積もられている建設費は1億4700万ドルで,このうち7500万ドルを連邦
政府機関FTAの予算制度,Small Startsによって獲得することを目指して
いるのですが,そのためには残りをどう手当てするか決めておかなければ
なりません.来年補助金を受け取るためのFTAへの申請期限は9/07で,
前日には市電建設の財務計画を市議会が承認する予定になっています.
FTA : Federal Transit Administration
ちなみに,Small Startsプログラムは,オレゴン州選出の議員が精力的に
動いて出来たもので,以前ご紹介していたかと思います.この制度では
7500万ドルが最高限度額です.

この段取りが順調に行けば,2008年には連邦予算がついて9月には着工
できるようになり,2011年2月の運行開始を目指します.期待されている
効果は,7億ドルもの民間からの投資と,面積にして240万平方フィート
(22万平方メートル強)に及ぶ新規開発です.

残る7200万ドルの財源の内訳は,次のようになる模様です.
* Oregon State Lottery funds 2000万ドル
* Local Improvement District (LID) 1500万ドル
* Portland Development Commission Tax Increment Funds (PDC TIF)
* City Transportation System Development Charge funds (TSDC)
600万ドル
* Federal Metropolitan Transportation Improvement Program funds
(MTIP) 370万ドル

さらに残る約27万ドルは,市の一般財源と関係地区の都市再開発基金から
となります.該当する地区と,その基金総額が次の通りです.
(金額は供出額ではありません)
- River District 1700万ドル
- Convention Center 400万ドル
- Central Eastside 620万ドル

この最後に残る27億ドルを,3地区の都市再開発基金などから捻出できる
ものかどうかは,9/06に市議会の投票で決められるようです.

LIDに関しては,路面電車開通で利益を得る沿線の土地所有者に割り当て
られるもので,大きな反対はないものと見られていましたが,一部から
電車が走っても益なしと見なされ反対も出ています.また,教会も沿線に
建っているために十数万ドルの支払いが生じることが,記事に取り上げ
られていました.

オレゴン州の宝くじ基金2千万ドルは,車両購入に充てられますが,条件
として,オレゴン州内の業者から新規購入する場合に限られています.
これは,現在のチェコ製車両を元に,米国向け車両の自社製造を目指す
OIW社を中心とした,United Streetcar LLCを意識してのことでしょう.
車両は6本ないしは7本の購入が予定されています.
OIW : Oregon Iron Works, Inc.

全ては1億4700万ドルという見積もりに基づいています.ポートランド
では,ロープウェイ建設の予算大幅超過で懲りた記憶がまだ新しいため,
市議会で計画者が説明した折には,その点への注文もありました.

ウィラメット川東岸へのストリートカー新線計画を巡る報道 :
Aug 14, 2007 Tram budget debacle casts shadow over Streetcar plan
(KATU Portland ニュースへのリンク)
August 15, 2007 Sam Adams touts plan for eastside streetcar
August 17, 2007 Streetcar financing plan upsets church
(The Oregonian ニュースへのリンク)
August 17, 2007 Inner east side could see changes
(Portland Tribune ニュースへのリンク)

最後に,今回到達した先への計画もあります.さらに南に進み,レイク
オスウィーゴ市(Lake Oswego)へ至る通勤路線です.
先日,沿線の自治体とメトロ(2州にまたがるポートランド首都圏のうち
オレゴン州内の約200万人を対象とした地域行政機関)と,TriMet(当地の
公共交通事業者)から構成される委員会※が,バスラピッドトランジット
(BRT)よりも利用者増加が期待でき,道路の混雑緩和に貢献するとして,
委員会としては路面電車(streetcar)を推奨するという記事も出ました.
ルート案の一つには,Willamette Shore Trolleyの軌道も含まれます.
※ The Lake Oswego Portland Advisory Committee

こちらもGoogleで描いてみましたが,専用軌道を走る可能性もあるため,
位置確認だけに留めてください.新しい終点が出発地です.
Get directions SW Bond Ave & SW Lowell St to Lake Oswego
(Google Maps へのリンク)
Take Public Transit SW Bond Ave & SW Lowell St to Lake Oswego
(Google Transit へのリンク)

August 16, 2007 Panel recommends extension of streetcar route
(The Oregonian ニュースへのリンク)
この記事によれば,現在のポートランド市電を延伸させる場合で建設費は
2億ドル前後と行政機関のメトロ(Metro)では見積もっています.まだまだ
BRTになる可能性もありますが,いずれにしても着工は早くて2011年で,
ポートランドのストリートカーは,しばらくLowell通りまでです.

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

ポートランド ストリートカー イーストサイドなど関連 過去ログ :
2007/5/05 市電利用増とモール工事現状
2007/1/28 United Streetcar 設立ほか
2006/5/12 東側への市電延長ほか
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2007年08月17日

【カッセル】レギオトラム8/19市内直通へ(2)

カッセル(Kassel)のトラムトレイン,レギオトラム(Regiotram)が,漸く
デュアルモードの車両性能を本格的に発揮することになります.
今度の日曜(8/19),13時からカッセル中央駅(Kassel Hauptbahnhof)で
式典が行われ,その後WolfhagenからのRT4系統のレギオシタディスが,
直流電化の市内線に向けてパンタグラフを上げて,中央駅を15:20に発車
する予定と報道されています.
NVVのウェブサイトで調べてみると,Wolfhagen Bahnhof14:36発のRT4が
あり,Kassel Hauptbahnhof到着が15:20で,15:22出発となっています.
NVV : Nordhessischen Verkehrsverbund
この列車から,行き止まり式だったカッセル中央駅の一部を改良,170mの
トンネルでスルー運転を可能にした新線区間を通り,1時間ごとに郊外の
非電化区間と市内電車線内との間で直通運転が開始されます.

かれこれ十年越しとなるカッセルのレギオトラム計画は,既存設備だけ
では実現できなかったため,カールスルーエやザールブリュッケンから
比べると,高額の1億8千万ユーロが投下されています.
今回の記事によれば,このうち中央駅の改造に2千8百万ユーロかかり,
28本のレギオシタディス(RegioCitadis)購入に8千万ユーロが費やされ
ました.予算総額1億8千万ユーロのうち,半分以上を占める1億ユーロは
ヘッセン州が,約5千万ユーロはドイツ連邦政府が補助し,残る約15%を
沿線の地方自治体が負担しています.これにより,利用客の5割増が期待
されているところです.

なお,直通運転は8/19からは電車とディーゼルカーのハイブリッド車両が
導入されているRT4系統だけで当面行われ,ドイツ鉄道線内の交流電化
区間と,カッセル市内電車線内の直流電化の双方を走れる交直両用機能を
備えたレギオシタディスが導入されているRT3系統とRT5系統の直通運転
開始は,9/16からと予定されているほか,NVV全体のダイヤ改正は12月に
実施されることになっています.
RT3とRT5が直通運転開始をRT4と同時に果たせないのは,信号取扱い所の
再構築が必要だからと説明されています.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
16.08.2007 Start ins Regiotram-Zeitalter
(HNA Online ニュースへのリンク)
15.08.2007 Durchbruch für ÖPNV-Vorzeigeprojekt
(Live-PR.com (Pressemitteilung) ニュースへのリンク)

直通運転開始の案内 : Der Durchbruch ist geschafft:
新たにレギオトラムが乗入れる先の市内線での路線図など :
Das neue RegioTram-Netz: Nordhessen rückt näher zusammen
(NVV RegioTram 公式サイトへのリンク)

系統図をまとめてみました.
資料を基に構成しましたが,正確ではないかもしれません.

RegioTram0819.png
8/19からは,RT4はカッセル方面への行き先がKassel Hauptbahnhofから
Kassel Am Sternになる模様です.
半地下の中央駅を発車して駅前広場を地下で潜り抜け,KVGの路面電車
市内線に合流するScheidemannplatzから,時計回りにループ運転を行い
ます.時刻表では終点となるAm Sternに2分停車,その後はトランジット
モールのKönigsstraßeを通って,Rathausを経由しながらぐるりと回って
くる形です.
KVG : Kasseler Verkehrs-Gesellschaft

9/16に予定されているRT3とRT5の直通運転が始まると,このようになる
と思われます.
RegioTram0916.png
RT5はRT4とは逆にScheidemannplatzから反時計回りを半周して,Am Stern
から中央駅には戻らず,Leipziger Straßeまで行きます.トランジット
モールには,RT5系統の双方向と,RT4のWolfhagen行きのレギオトラムが
走ることになります.

このトランジットモールの南西側出口では,レギオトラムの車両がKVGの
一般の路面電車より車体幅が広く,従来のカーブでは不十分だったため,
25万ユーロを投じて改修したそうです.更に,レギオトラムが2本連結で
運転される場合,曲がりきった後のRathaus/Fünffensterstraße停留所に
ある横断歩道との間隔が狭くなりすぎるため,横断歩道を3万5千ユーロ
掛けて6m移設したという話もあります.
それ以外にも,先日ご紹介した,30万ユーロを掛けて線路を整備したのに
僅か1年半で定期列車が走らなくなったRT2廃止の話など,レギオトラム
絡みの無駄遣いを,まとめた記事が先日出ていました.
10.08.2007 Regiotram? Pannen-Bahn!
(HNA Online ニュースへのリンク)

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

カッセル レギオトラム関連 過去ログ 2007年分 :
2007/7/26 レギオトラムRT2が廃止に
2007/6/29 レギオトラム8/19から市内直通へ
2007/2/20 中央駅の工事順調に進む
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2007年08月16日

トラムに匹敵【パリ】出だし好調のヴェリブ

パリでセルフサービス式のレンタル自転車,ヴェリブ(Vélib')がデビュー
して1か月,出足は順調のようです.

Vélib'は,日本語でも既に多くの場所で紹介されていますが,その概要を
まず記します.ご存知の方は公式サイトへのリンクの先まで読み飛ばして
ください.

このレンタサイクルは,事前に登録さえ済ませておけば,1回の利用に
つき最初の30分間は無料ということと,無人の貸出しスタンド(駐輪場)が
市内300メートル毎に設置されるため,街中をちょっと移動したい時や,
駅から目的地が少し離れているなどというようなケースにも利用できる
仕組みです.無人の貸出しスタンド(駐輪場)は750か所からスタートしま
したが,年末には1451か所まで倍増する計画です.自転車も1万台が用意
されて営業開始となりましたが,これも年内には倍の2万台になります.

登録は有料ですが,その登録料は1日だけなら1ユーロ,1週間は5ユーロ,
年間でも29ユーロで,期間中は無制限に借りることができ,最初の30分は
無料で,初めの30分延長が1ユーロ,その次の30分延長は2ユーロが加算
され,3回目以降の30分延長からは4ユーロずつの加算です.ややこしい
料金体系ですが,長く利用すると,それだけ料金がかさんできます.
例えば,60分は1ユーロですが,90分は3ユーロになり,2時間は7ユーロ,
3時間は15ユーロになっていきます.観光地にあるような貸し自転車の
感覚で数時間使うと,大金を支払うハメになりそうです.
1回の利用につき最初の30分は期間中何回でも無料ですので,目的地に
到着する前に無料の30分が迫り,近くの貸出しスタンドで自転車を乗り
換えると安上がりになりそうですが,一旦返却したあと一定時間の間は
同じ登録では貸出しできないように設定されているとのことです.

無人貸出しスタンド(station)は,1日24時間365日稼動しています.
場所にもよりけりですが,ひとつの場所に数十台もあるわけではなく,
十数台程度ですので,スタンドに行っても自転車が出払っていたり,逆に
返したいのに返却できる空きがないというようなこともあります.それに
備える形で,各スタンドには最寄の場所を探せる画面があったり,Vélib'
公式サイトにアクセスすると,貸出し可能台数(Vélos disponibles)と
返却受入れ可能台数(Points d'attache disponibles),全体の数(Nombre
total de points d'attache)など利用状況が,Google MapsのAPIを利用
した地図上でインタラクティブに確認できるようになっています.
ちなみに,年間登録者が返却時に空きがなかった場合,ICカードを満杯の
スタンドの所定の位置にかざすと,15分の猶予を与えられるそうです.
RATPやパリ近郊のSNCFで使われているICカード型乗車券,Navigoを登録
することもできます.

公式サイトのスタンド検索画面で表示される台数をみていると,やはり
深夜時間帯には中心部のスタンドの自転車は出払っていて,市境に近い
ところに自転車が集まっている様子が伺えます.メトロやバスの運行が
終了したあとの,安上がりな移動手段にもなっているようです.
しかし,自転車の配置を利用者流動だけに任せるわけにはいかないため,
操配専用の運搬車両が用意されていますが,環境への配慮で電気自動車が
用いられています.

これらを導入し,運営管理しているのは,パリ市とSOMUPIという企業体
です.SOMUPIは,世界第二位の屋外広告会社,JCDecauxが66%を所有しま
すが,同社はセルフサービス式レンタル自転車の世界最大手でもあり,
フランスでは2005年に開始されたリヨンでの実績がありました.
JCDecauxは,1964年からリヨンでバスの停留所に屋根や仕切りを設置する
のと引換えに,それらを広告の場として販売,設置資金を回収するという
手法を開始しています.
SOMUPIの運営はよく判りませんが,JCDecauxは8千万から9千万ユーロを
ヴェリブに投入していて,年間の補填は6千万ユーロに契約で固定され,
登録料はパリ市に収められるため,不足する3千万ユーロ近くは,自転車
貸出しスタンドの広告収入で埋め合わせをするようです.

パリ市では,この貸自転車とスタンドの導入に先立ち,2001年から自転車
専用レーンの設置に努めてきました.その総延長は2006年には371キロに
まで達し,メトロ(地下鉄)より長くなっています.この整備がなければ,
いくらきめ細かく貸出し場所を設けても,普及は困難だったでしょう.
ただし,距離にはバス専用レーンを自転車にも開放した区間や,自転車
だけに一方通行を認めた区間なども含まれています.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
トップページ : Paris - Vélib - location de vélos à Paris
英語版の解説 : Le dossier de presse Vélib' en anglais(13/07/2007)
(パリ市 Vélib' 公式サイトへのリンク)
プレス向けの資料が,下段のリンク先より入手できますが,JCDecauxの
サイトからも,同じPDFファイルをダウンロードできます.
Press kit about Vélib' (英語版のPDFファイル)
(JCDecaux 公式サイトへのリンク)

ここから,1か月経過後の状況報道に移ります.AFPや各メディアの記事を
総合すると,次のような数字が浮かび上がってきました.

* スタート18日目で100万回目のレンタルを達成,1か月後には150万回に
* 全ての貸出し自転車が一日に走る距離は,地球を四周するほどに匹敵
* 一日平均7万回のレンタル,過去最高は8/04の9万7千回
* 29ユーロの年間登録を,これまでに5万人近く(4万5千人とも)が行う
* 97%が無料対象となる1回あたり30分未満の利用
* 年間登録者の平均利用時間は1回につき15分,短期登録者は同25分
* これまでに自転車の盗難が100台,破損は200台で,いずれも想定内
* 5%の貸出しスタンド(station)でデータの伝送エラー発生

14 août 2007 Vélib': 1,5 million de locations en un mois
(Le Figaro ニュースへのリンク)
14 août 2007 Vélib, un premier mois sur les chapeaux de roue
(Libération ニュースへのリンク)
14/08/2007 Vélib': un mois après, c'est le succès
(La Provence ニュースへのリンク) AFPの記事

このように,多少の問題が露呈したものの,一日7万回も利用されている
ことが判明しました.この数字は単純には比較できないと思いますが,
トラム(Tramway)の利用者数にも匹敵し,大量輸送機関の仲間と言っても
いいのではないかというような表現も他でありました.

交通事故件数の増減は,9月にならないと判らないそうです.
また,気になる他の公共交通(メトロ,バス,トラム)への影響はどうか,
肝心の目的である自動車の交通量を減らすことができたのかどうかは,
触れた記事を見つけられませんでした.

セルフサービス式のレンタサイクルは,欧州各地で流行り始めています.
フランスでも2005年のリヨンを皮切りに,パリの次はマルセイユでも今秋
から開始されるようです.
15.08.07 Après Lyon et Paris, Marseille va bientôt pédaler
(Le Monde ニュースへのリンク) Reutersの記事

最近ではスペインのセビリアや,バルセロナも仲間入りしていました.
ドイツ語のウィキペディアで,Fahrradverleih を検索するとリストや
各地の自転車の画像を見ることができます.
他の街の自転車がド派手な配色なのに対して,パリのは極めて大人しい
色使いです.flickrには600を超える画像投稿があります.
Search results for photos matching Vélib'
(flickr へのリンク)

自転車は,フランスのMercier製ですが,組立はハンガリーで行われ,
タイヤはドイツ,変速機は日本製で,全体の99%がリサイクル可能とか.
14/08/2007 Paris et ses Vélib', "vitrine mondiale" pour le groupe
JCDecaux
(Webmember ニュースへのリンク) AFPの記事

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

フランスのトラムウェイの話題,おまけ :
バッテリーで走る区間のあるニースのトラムは,今後が全て順調の場合で
開業は11月上旬にずれ込みそうです.
今年前半ごろまでは,全く畑違いですが,ボーイング787型機の初飛行と
どちらが先か,賭けができそうなほどでした.
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2007年08月13日

【ミネアポリス】再建橋にライトレールなし?

ミネアポリス(Minneapolis)でミシシッピ川に掛かるハイウェイI-35Wの橋
(Mississippi River Bridge)が崩壊という,衝撃的な出来事から十日余,
現地で捜索活動が終了したという報にはまだ接していません.

先週,ミネソタ州の州知事とミネアポリスの市長が会見し,早急に橋の
再建に着手するとともに,新しい橋にはライトレールかバス専用レーンを
盛込む設計とすることを発表していました.このことは,日本でも報道
されていましたので,ご存知のかたも多いでしょう.

しかし,この話題にはこの週末に続報がありました.ミネソタ州の交通
委員を兼務する同州の副知事が,新しい橋にはライトレールを組み込め
ないことを,同州の運輸省見解として知事に進言していたことが明らかに
なったのです.
ライトレールを新しい橋に走らせる可能性を探る調査を行うと,2008年末
までに橋を再建するという期限に,とても間に合わなくなるからという
理由でした.

APが伝えていますので,さまざまなメディアが取り上げているものの,
おまけ程度の扱いですので,記事の最後のほうに書かれています.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
August 12, 2007 Dive resumes at bridge site after delay for
fast-running river
The Associated Pressの記事
(West Central Tribune ニュースへのリンク)


追記 : 2007/8/14
ついでのように書かれていた再建する橋のライトレール問題は,週が
明けると同時に堰を切ったかのように各紙が一斉に報じました.

考えられているライトレールは,先日強度の問題が指摘されていた
ワシントンアベニュー橋(Washington Avenue Bridge)を通る予定の
セントラルコリドー(Central Corridor)だったことも判明します.
また,時間の問題とともに,ライトレールを再建する橋に走らせる
ために生ずる追加資金は,再建の財源となる緊急災害への連邦予算
から規則上出せないという問題もあり,火曜(8/14)に計画が明らか
になるものの,ライトレール用のスペースが新しい橋に盛込まれる
可能性が低いことに変わりないようです.

08/13/2007 Molnau: Stop talk about light-rail on new I-35W bridge
08/13/2007 Sketch of the replacement for collapsed bridge to be
revealed Tuesday
The Associated Pressの記事
(Pioneer Press ニュースへのリンク)
August 13, 2007 New bridge won't include light rail
(Minneapolis Star Tribune ニュースへのリンク)

しかし,ライトレール不可を進言した副知事が元々ライトレールに
反対していたということもあり,ミネアポリスの市長やミネソタ州
上院議員の交通委員は,ライトレールなしに同意していません.
セントラルコリドーの建設費を節約する千載一遇の機会ととらえて
いるようです.
August 13, 2007 New Minn. bridge will come fast, but will it be
the right bridge?
The Associated Pressの記事
(West Central Tribune ニュースへのリンク)
追記 : 2007/8/15
ミネソタ州の運輸省(MnDOT)は,新しい橋の草案を発表しました.
崩壊した橋より上下各一車線ずつ広くなる橋には,慰霊碑のような
事故を記憶に留めるようなものはなく,ライトレールが盛込まれ
なかったことも含め,全米で広く報道された模様です.

その後,MnDOTは新しい橋をライトレール対応にするかどうか,
まだ調査中だとする記事が出ました.
MnDOTは,一刻も早く動脈だった橋を再建したいとしながらも,
悪天候で度々中断されながらも今だ不明者捜索は継続中であり,
国家運輸安全委員会(NTSB)の調査もあるので,これらを妨げる
ようなことはしないと,発表の場で強調したそうです.
08/14/2007 MnDOT outlines plans for new bridge
(Pioneer Press ニュースへのリンク)
MnDOT : Minnesota Department of Transportation


橋の崩落は,直接的にも間接的にも今後も色々な影響を各所にもたらして
いくと思われますが,近いところでこの地に予定されている通勤鉄道の
開業を,1年以上前倒しにする可能性が出てきています.
2009年の開業予定と言われていた鉄道は,ミシシッピ川に掛かる橋が一つ
無くなったことで生じる周辺道路の混雑を緩和する目的で,開業時期を
少しでも早くに繰り上げようと,関係者らは取り組んでいるそうです.
この計画には連邦補助金がまだおりていませんが,最も早くことが進んだ
場合,今秋にも限定的な営業を開始できる可能性があります.

August 10, 2007 Collapse could move up Northstar opening to next
fall
(Star Tribune ニュースへのリンク)
8/10/2007 Bridge collapse adds to push for light rail APの記事
(Post-Bulletin ニュースへのリンク)

その旅客鉄道とは,Northstar Corridorと呼ばれるコミューターレール
(commuter rail)です.貨物鉄道の所有する路線に自前の車両を走らせる
形で,新たにレールを敷く必要はなく,自らは車両や駅などの設備投資を
行います.コミューターレールは線路を貨物列車と共用することから,
機関車牽引の頑丈な客車列車になるケースがほとんどです.
実は,このノーススター・コミューターレールの保守設備の着工式は,
8/02にBig Lakeで行われる予定でしたが,9/06に延期されていました.

路線図 : Northstar Commuter Rail Route Map
(MnDOT/NCDA 公式サイトへのリンク)
MnDOT : Minnesota Department of Transportation
NCDA : Northstar Corridor Development Authority

多少余談気味になりますが,橋崩落のテレビ報道の時に,1940年に起きた
タコマ橋(Tacoma Narrows Bridge)崩壊の記録映像をご覧になったかたが
いらっしゃるかもしれません.
ワシントン州タコマの市街地に近いタコマナローズ橋は,十年後には再建
されて現在に至りますが,7月には,その南側に新しいつり橋も完成して
います.新しい橋は東行き車線に使用され,従来の橋も西行き車線専用と
して残りますが,新しいつり橋は,将来は二段構造にできるように主塔や
ケーソン(caisson)が設計されているそうです.
いつか追加されるかもしれない二段目は,道路になるかもしれませんし,
具体的な計画があるわけではないと思われますが,ライトレールが走る
ことも想定されているとか.
SR 16 - New Tacoma Narrows Bridge
(WSDOT 公式サイトへのリンク)
WSDOT : Washington State Department of Transportation

タコマ駅を発車してポートランドに向かうAmtrakのタルゴは,しばらく
タコマ海峡(Tacoma Narrows)に沿って走りますので,このツインつり橋を
下から見ることができるでしょう.ウィキペディアによれば,二つ並んだ
つり橋としては,世界最長になるのだそうです.

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

前回のミネアポリスの話題 : 2007/8/03 LRT通行予定の橋も補修必要
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2007年08月12日

【ロンドン】クロイドンのトラム経営に不満

ロンドンの中心部から20キロ近く南に位置するクロイドン(Croydon)地区
には,2000年から路面電車のTramlinkが走っています.文字通り路面を
走る区間もあれば,元は鉄道だった敷地を専用軌道化したところもあり
ます.路線は中心に環状ルートがあり,そこから3方向に放射状に伸びて
延長28キロに及び,今では年間2200万人が利用するなど,クロイドンでの
東西の交通の便を改善しました.車両はボンバルディア(Bombardier)製の
部分低床車モデル,Flexity Swiftシリーズが導入されています.

ロンドンの公共交通機関は,TfL(Transport for London)が取り仕切って
いますが,クロイドンではTCL(Tramtrack Croydon Limited)が,TfLの
代わりにトラム(Tramlink)を99年契約で運営しています.
TCLは,PFIによる民間資本活用の一環として,このトラムの設計,建設,
運行・保守などの権利を,1996年に8社の中から選ばれて獲得しました.
PFI : Private Finance Initiative
TCLは4つの会社から成り立つ企業体で,車両関係のボンバルディアや,
ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(Royal Bank of Scotland)に,
建設を担う合弁企業と,路線バス会社大手でトラムの運転士や運行管理を
担当するファーストグループ(First Group)のFirst Tram Operationsで
構成されています.First Tram OperationsはTOLと省略されていますが,
これは一つ前の名称,Tram Operations Ltd.からきています.

しかし,このトラムを運営するTCLは,ロンドンの交通局TfL(Transport
for London)から睨まれています.
TfLは,先日もBBCにクロイドンのトラム運営からTCLを排除して,より
直営に近い形にする方法を模索していると語ったそうです.BBCの報道に
よると,TfLは,昨年2006年5月のトラム脱線事故の報告書を基に,TCLの
経営能力を全く容認できないレベルとまで見なしています.

その事故では児童らが多かった乗客180人全員に怪我はなく,その点では
幸いでしたが,トラムが不具合のあった分岐器の手前で止まれなかった
ことが問題視されます.
これを経営会社のTCLと,運転士や運転管理者の所属するTOL(First Tram
Operations)との間の連携が欠けていたことが原因として,両者の貧弱な
関係がトラムの安全運行を脅かす可能性があると,政府機関の鉄道事故
調査局であるRAIBが結論付けていました.
RAIB : Rail Accident Investigation Branch

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
2007/08/10 Safety concerns over Croydon tram
(BBC News ニュースへのリンク)
10th August 2007 TfL: 'Tramtrack's performance unacceptable'
(Croydon Guardian ニュースへのリンク)

TCL(Tramtrack Croydon Limited)をインターネットで検察してみると,
TfLからの警告はこれが初めてではないようです.
例えば今年2007年1月には,安全上の業務改善を実行していないことを
理由に,ロンドン市長はTCLの経営陣に退陣を求めていたりします.
23-1-2007 Mayor calls for end to Croydon Tramtrack franchise
(Greater London Authority プレスリリースへのリンク)

その後の顛末はわかりませんが,2月にはロンドン地下鉄などと共通の
プリペイド式カードによる運賃収入の分配比率を巡り,TCLがTfLを訴えた
ケースでは,TCLの主張が退けられたというようなこともありました.
01 February 2007 Tramtrack Croydon Ltd loses case for cash fare
compensation
(Transport for London ニュースへのリンク)

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

ロンドン トラム関連の最近の話題 :
2007/8/04 West London Tram計画はお蔵入り
2007/7/20 Cross River Tram南半分先行か?
posted by NeiTech at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州(独仏西語圏外) このエントリーを含むはてなブックマーク

2007年08月11日

【グラーツ】低床車45本の発注先が決定か

オーストリアでウィーンに次ぐ第二の都市,とは言っても160万人都市の
首都から比べると,人口29万弱のグラーツ(Graz)は小さく見えるかもしれ
ません.しかし,以前もご紹介しているように,この街にも路面電車が
走っています.車両は60本以上を数えますが,義務付けられている低床化
促進と路線延長に備え,45本で公示額1億1250万ユーロという,世紀の
大発注を行います.グラーツ市の公共事業を司るGrazer Stadtwerkeが,
その次期低床車45本の発注先を決めたという報道が,先日ありました.

3社による競合でした.GVBにCityrunnerというブランド名の全低床車を
2001年に18本納入している実績があるボンバルディア(Bombardier)と,
有名なウィーンの超低床車で,グラーツで試験走行した経験もあるULFを
擁するシーメンス(Siemens-Konzern)に,ヴァリオバーン(Variobahn)を
提示したシュタットラー・レール(Stadler-Rail)です.
GVB : Grazer Verkehrsbetriebe (Grazer Stadtwerkeの交通局)

受注したのは,シュタットラーのバリオバーン(Variobahn)でした.
同社は低床車市場で最近じわじわシェアを拡大してきています.車種は
異なりますが,スイスのバーゼルで2社から60本の大量発注を獲得し,
ドイツの3都市分とあわせて,ここ数年で100本以上の低床車を受注して
います.

しかし,今回この発注先を報じた記事では,サプライズ(Überraschung)
という表現が使われました.ボンバルディアかシーメンスと思われていた
ようです.決め手は,約1億ユーロと提示された価格の安さだけでなく,
技術的なこともあったとされています.

バリオバーンにはいくつか種類がありますが,100%低床を実現するのは,
ドイツのケムニッツ,フィンランドのヘルシンキに,オーストラリアの
シドニーで導入された実績を持つハブモータ,車輪一体型電動機を使用
するタイプです.元々はボンバルディアに吸収されたAdtranzが開発した
ものですが,バリオバーン(Variobahn)の販売権は,Stadler Rail AGに
引き継がれていました.
Adtranz : ABB Daimler Benz Transportation
同車種は,ドイツのボーフム,ミュンヘン,ニュルンベルクなどに今後も
納入予定で,最近ミュンヘン向け車両デザインが公開されています.

実は,ボンバルディアがグラーツでは初めての低床車を納入していると
書きましたが.グラーツで走っているCityrunnerは,ハブモーターを採用
したタイプです.同じFLEXITY Outlookの仲間でオーストリアのリンツが
導入したCityrunnerは,直径の小さい車輪を使い,左右の車輪を車軸で
結びつけた普通の台車で低床化を実現していますが,グラーツのは車輪と
モータを一体化して車軸を省いたことにより,低床化を図った台車です.

ハブモータは価格が高くなりがちで,ばね下重量も大きく軌道次第では
好ましくないため,リンツのCityrunnerでは採用されませんでしたが,
今となってはそちらの方が,Cityrunner改めFLEXITY Outlookシリーズの
中では主流となりました.
お馴染みのマルセイユ,バレンシア,アリカンテなどの新車も同タイプ
ですし,リンツ以降は,ポーランドのウッチを皮切りに,ブリュッセルや
ジュネーブなどでも採用されています.また,10月にはインスブルック
にも到着して,2008年2月まで試運転が行われる予定と聞きます.
グラーツもリンツも,ボンバルディア傘下のBWS Wienが開発しましたが,
ハブモータ式Cityrunnerは,グラーツ以降あとが続かなかったようです.
BWS : Bombardier Wien Schienenfahrzeuge

意図的か偶然かわかりませんが,100%低床のバリオバーン導入決定で,
グラーツはハブモータ式で100%低床車を揃えることになります.新車は
2009年デビュー予定で,2018年までに45本が揃う計画だそうです.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
10.08.2007 Neue "Bims" für Graz: Der Überraschungssieger
(Kleine Zeitung ニュースへのリンク)

現在の低床車両案内 : Unsere Dienstleistungen Straßenbahn
路線延伸計画 : "Graz tramt"Ausbau Linien 4+ 5+ 6+
(GVB 公式サイトへのリンク)

ミュンヘン向けバリオバーンの予想図 :
25.7.07 Erste Ansichten der neuen Tram für München
(Muenchen24.info ニュースへのリンク)

先ほどの記事の最後に,シーメンスが選ばれなかった理由として,同社の
グラーツ工場との関連が記されています.台車を主に製造する工場のはず
ですが,グラーツの政策上で歓迎されないというように読め,よく判りま
せん.それに,シーメンスが静観していないような雰囲気です.こんな
記事も出てきました.
11.08.2007 Zuschlag an Schweizer sorgt für Tram-Eklat
(Kleine Zeitung ニュースへのリンク)

Stadlerはスイスを本拠地にしていることから,記事は同社のことを,
スイスの(Schweizer)と記していますが,それに,スキャンダル?(Eklat)
という言葉がタイトルに加えられています.
この記事によれば,価格はシーメンスの方が安かったものの,Stadlerは
保守の面で好条件だったことと,定員160名が支持されたようです.

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

グラーツ市電 過去ログ :
2007/3/24 ウィーンの中古で急場をしのぐ
posted by NeiTech at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(1) | オーストリア このエントリーを含むはてなブックマーク

2007年08月10日

【ポートランド】旧信号扱所をMAXが再利用へ

オレゴン州ポートランド(Portland)では,バス専用のトランジットモール
だった通りに現在ライトレールを建設中で,その通りの北端にはユニオン
ステーション(Union Station)があります.
Amtrakの列車がシアトルなどに向けて日に数本発着し,その駅前からは
トランジットモールを走る路線バスが発着するほか,隣には長距離バスの
グレイハウンド(Greyhound)のターミナルもあり,ライトレールMAXこそ
通りませんが,地上交通の拠点です.
ロマネスク様式の時計塔をもつ駅は,連邦が定めるNational Register
of Historic Placesにも指定されています.

しかし,かつて客貨ともに大いに賑わったユニオンステーションも,旅客
列車は数えるほどに減ってしまい,駅舎の老朽化も進んでいる模様です.
今から10年前には,今回話題の中心である,当時オレゴン州で唯一残って
いたとされる駅構内の信号扱い所(Interlocking tower)も,廃止されて
います.以前はそこで信号とポイントを操作して,発着する列車を多数
あった線路に導いていました.廃止は,操作が自動化されて中央に集約
された結果で,数多くの線路群も,今は大部分がコンドミニアムに生まれ
変わっています.

廃止後も,信号取扱所の小さなレンガ造りの二階建て建物は残っていて,
今でも各種サイトで確認することが出来ます.
その廃止された信号取扱所が,十数年の空白の時を経て,第二の役目を
同じ鉄道に捧げることになるという記事がありました.新たな用途は,
ユニオンステーションのすぐ近くにやってくることになる,現在TriMetが
建設中のライトレール,MAX新線の運転管理室です.
TriMet : Tri-County Metropolitan Transportation District of Oregon
MAX : Metropolitan Area Express (Light Rail)

MAXには,各線にそれぞれ運行を管理する制御室があります.いずれも
自動化されているため無人で,ユニオン駅で復活する信号所も,無人の
運転司令関連機器を納めた建物に生まれ変わります.駅舎本屋ほどでは
ないにしても,歴史的な価値がある部分は残されるようです.
TriMetは,かねてより検討を重ねた結果,この建物が一番ふさわしいと
判断して,旧信号取扱所を含めた駅を保有するPortland Development
Commission(PDC)と交渉中です.PDCからの寄贈が望まれるところでした
が,TriMetはライトレール建設を含むトランジットモール再生のための
資金からやりくりして,その建物を購入することになりそうです.

市電開通後に,その建設費を大幅に上回る額の投資が沿線にもたらされた
ことで知られるパール・ディストリクト(Pearl District)が近いことも
あり,PDCはユニオン駅周辺の再開発を考えています.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
Aug. 7, 2007 Light rail gives tower second life
(PDXGuide.com ニュースへのリンク)
August 7, 2007 TriMet sees opportunity for Union Station area
development

(kgw.com ニュースへのリンク)
PDXGuide.comの記事は,信号所に勤めていた人の昔話も交えています.

廃止された1997年に全米で残っていた信号所などの一覧 :
オレゴン州はゼロになっていますが,Portland Union Stationの信号所が
その年の11/05に廃止されたと記されています.
towers open as of December 31, 1997
(North American railroad interlocking towers and cabinsへのリンク)
南向きバードアイで捉えた interlocking tower "VC"
(Windows Live Local bird's eye へのリンク)

路線図を含む,Portland Mall Light Rail Projectの概要 :
Mall Design and Future Transit Service
(TriMet 公式サイトへのリンク)
信号所は,NW 4th Avenueと,NW Hoyt Streetの交差点の近くに建って
います.上のリンク先にある路線図で言えば,右側からやってきた黄色と
緑の線が,最初に二手に分かれる場所のすぐそばです.

Creative Commonsで利用できる画像がありましたので貼り付けます
Portland - Union Station 3 by tfitch (flickr)