2008年06月16日

【セントラルコリドー】当面の障害乗り切る

こちらをご覧のかたはもうご存知とは思いますが,「世界のLRT」という
願ってもない本が,JTBパブリッシングのキャンブック・シリーズとして
先日発売されました.掲載された業界第一人者らによる写真の見事さや,
重宝する巻末資料は言うまでもなく,公共交通によるまちづくり情報が,
都市ごとの本文にふんだんに盛り込まれているのも特徴の一つです.

その本の冒頭でも触れられている通り,LRT(Light Rail Transit)という
言葉も今や市民権を得てきています.ところが,和製英語ではないのに
意外にも発祥の地である米国でこの言葉を使っているのは,少なくとも
メディアの分野においては,一部の地域だけに限られているのです.
試しに,LRTを含む英語で書かれた記事をGoogleなどでニュース検索して
みてください.米国の記事はほとんどヒットしません.もちろん,呼び方
より重要なのは中身ということは,言うまでもありません.

その米国で,LRTという言葉が使われることのある数少ない地域の中に,
ミネソタ州があります.その州都セントポール(St. Paul)とミネアポリス
(Minneapolis)というツインシティ(Twin Cities)を結ぶ,ライトレールの
セントラルコリドー(Central Corridor)計画の,先週末までの続報です.

州知事が予算案の一部に拒否権を発動し,州がセントラルコリドーに支出
する7千万ドル分が消滅しかかった件は,その後の長時間に及ぶ粘り強い
交渉の結果,期限だった5月中旬に何とか復活させることができました.

残る問題は,ルート途中のミネソタ大学(University of Minnesota)が
唱えている反対でした.同大学はセントラルコリドー計画そのものには
反対していませんが,ミシシッピ川をはさむ両岸にキャンパスが広がる
ミネアポリス・キャンパスのうち,東岸(East Bank)地区のワシントン・
アベニュー(Washington Avenue)上をライトレールが走ることには,計画
当初から反対していました.対案として最初は地下化を,次に北への迂回
ルートを求めていたのです.

大学側の反対理由は,交通渋滞と電車の通行で研究に支障が出ることへの
懸念でした.後者は振動や電気的な干渉に敏感な,施設への影響を心配
してのことです.

計画側からみれば,地下化はもちろん,北への迂回も建設費が増え,その
分を補う利用者数増も期待できず,連邦からの補助金を受けられる基準を
外れてしまうため,認めることのできないものでした.

連邦への申請期限が9月に迫っているなかで,ツインシティなど7郡の広域
行政と地域計画立案の機関メトロ・カウンシル(Metropolitan Council)
は,5月下旬にワシントンアベニューの路面通行案を今一度承認します.
反対が一票ありましたが,それは大学からでした.

大学側は,セントラルコリドー計画そのものには反対しないこともあり,
いつまでも反対姿勢を貫けないとみて,当局との話し合いに応じます.
その結果,大学の環境と資産を守り,安全確保のために十分な投資を行う
ことを当局が保証するという条件を引き出し,6/13に学内の路面走行を
認める決定を下しました.

多くの記事が出ましたが,画像や地図も豊富なミネソタ州の公共ラジオ局
MPRの記事を,先月から時系列順に並べて紹介します.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
May 19, 2008 With state support, Central Corridor light rail moves
forward

May 28, 2008 Central Corridor line approved, despite U of M.'s
objections

June 12, 2008 U of M Regents prepared to support light-rail plan
(Minnesota Public Radio ニュースへのリンク)
MPRも,セントラルコリドー計画自体は支持するものの,セントポールの
スタジオ前をライトレールが走ることになるため,騒音や振動が放送に
与える影響を心配していました.

結局ミネソタ大学は条件付きで折れることになりそうだと伝える記事:
June 11, 2008 U changes direction on light-rail trains
(Minneapolis Star Tribune ニュースへのリンク)
大学内の投票結果,キャンパス内の路面走行を認める決定を出したことを
伝える大学の発表: 6/13/2008 U of M Board of Regents vote to pursue
an at-grade solution for Central Corridor Light Rail Transit

(UMN News へのリンク)

プロジェクト概要: Central corridor light rail transit home page
(Metropolitan Council 公式サイトへのリンク)

今後,全てが順調に運び,全米各地からの申請との競争を勝ち抜いて,
総予算の半分を賄う連邦からの補助金を獲得すれば,2014年の開業が期待
されています.

関連過去ログ: 2008/4/14 知事の拒否権で危機

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.
posted by NeiTech at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(1) | 米国中部 I このエントリーを含むはてなブックマーク
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Excerpt: 実現に向けて,これまで幾度となく危機を乗り越えてきた,ミネソタ州 ミネアポリス(Minneapolis)とセントポール(St. Paul)を結ぶ,都市間 ライトレールのセントラルコリドー(Centra..
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