2009年01月17日

【ベセスダ】パープルラインはLRTかBRTか?

ワシントンD.C.の北西に隣接し,米国海軍の大規模な医療センターなどで
知られているメリーランド州ベセスダ(Bethesda)は,数多くの連邦機関が
本拠を構えるほか,D.C.郊外でも有数な高級住宅地だそうです.
そのベセスダには,メトロレール(Metrorail=地下鉄)のレッドラインが
走り,D.C.中心部との間の公共交通は確保されています.

このようにワシントンD.C.中心部からは,放射状に伸びるメトロレールが
整備されていますが,かねてより横の連絡線構想も検討されてきました.
下に路線図のあるページのリンクもありますが,メトロレールのレッド
ラインはU字型の線形で,ベセスダと対をなすもう片方の郊外に位置する
シルバースプリング(Silver Spring)や,更に東方のグリーンラインに,
オレンジラインの末端部とベセスダを結ぶ,全長約16マイル(25キロ)の
路線です.ヨーロッパで言えば,ちょうどパリのトラムのような路線を
イメージすることになるのでしょうか.行政区分上はワシントンD.C.を
走らず,全線がD.C.外縁部に沿うメリーランド州内だけの走行です.

その路線は,パープルライン(Purple Line)と名付けられています.
かつてはメトロレールと同様な地下鉄規格での建設が考えられた時代も
ありましたが,需要予測などから非現実的となり,今はLRTかBRTか二者
択一です.2015年開業が目標で,どちらかに決める時期が刻々と迫って
きています.
BRT: bus rapid transit

パープルラインの東半分が走るプリンスジョージ郡(Prince George's
County)は,鉄道支持ということでライトレール案にかたまっています.
一方ベセスダを含む西半分はモントゴメリー郡(Montgomery County)で,
ここでは一部住民がパープルライン自体に反対しているものの,ライト
レール支持をまもなく郡の議会が承認する手はずになっていることが,
つい先日報じられていました.

ところがその翌日,ワシントンD.C.が本拠の環境シンクタンクのWRIが,
メリーランド州のMTAに,BRTのほうがベストの選択とする報告を出した
ことが明らかになりました.
WRI: World Resources Institute
MTA: Maryland Transit Administration

理由は,BRTのほうがLRTより費用対効果が得られリスクが低いことと,
地球温暖化ガスの排出量を抑えられるからです.

その報告書とは,パープルラインのモード比較検討と環境影響表明書の
草案(AA/DEIS)を分析したものです.
AA: Alternatives Analysis
DEIS: Draft Environmental Impact Statement

AA/DEISでは,LRTとBRTでそれぞれ投資額に応じて三段階に分けられ,
合計六種類の比較がなされています.その中で今回のWRIのレポートは,
中規模投資のBRT(MI BRT)が最良としていました.
MI: Medium Investment

環境影響面に関しては,ライトレールは動力源の電気を発電する過程の
排出量が盛り込まれるため,投資額の大小を問わず温暖化ガス排出量を
削減できないとAA/DEISでは評価され,逆に1600台分の自動車に相当する
年間9千メートルトン二酸化炭素排出量を削減できるとされるBRTが優位
となりました.

経費に関しては,MI BRTが建設費5億8千万ドル,運営費年間1700万ドル,
MI LRTは建設費12億ドル,運営費年間2500万ドルとメリーランド州MTAは
見積もっています.

これだけの差がありながら,現実にはバスより鉄道を好む利用者は多く,
投資額を相殺するほどの利用者数の差が見込まれてLRTが選ばれることも
あるのですが,ここでは利用予測数のモード差が小さいとWRIはみたこと
から,WRI自身はライトレールそのものに反対するわけではないものの,
パープルライン計画ではBRTを推す結論に至った模様です.

これはパープルラインが,都心部と郊外を直結する放射状路線の一つでは
なく,郊外郊外となる環状ルートの一角だからかもしれません.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
01/15/2009 Enhanced Buses Best Option for DC-Area “Purple Line,”
WRI Finds
(World Resources Institute へのリンク)
詳細なレポート(PDFファイル)へのリンクもあります.

このWRI自身のプレスリリース以外は,一部メディアが取り上げただけに
留まっていますが,週明けにはもう少し出てくるかもしれません.
January 16, 2009 Study: Bus transit better than light rail for Md.
(Washington Business Journal ニュースへのリンク)

モントゴメリー郡が,パープルラインにライトレールを推すことを決める
ことになりそうだと伝える記事:
1/16/09 MontCo planning board votes for light rail on Purple Line
(Washington Examiner ニュースへのリンク)
January 16, 2009 Montgomery Planners Back Rail
(The Washington Post ニュースへのリンク)

ワシントンポスト紙のサイトには,パープルラインの情報が満載です.
LRTとBRTの比較WP版: Jan. 8, 2009 Light Rail vs. Bus Rapid Transit
特集ページ: The Purple Line Proposal
想定される路線図: May 31, 2007 Proposed Purple Line Route
(The Washington Post ニュースへのリンク)

反対派の中には,パープルライン計画の一部が鉄道廃線跡であるCapital
Crescent Trail(Georgetown Branch Trail)に沿っていて,この廃線跡は
周辺住民が散歩したりジョギングやサイクリングに非常に良く使われて
いるため,そのトレイルへの影響を懸念する人たちがいます.

Washington Examinerの記事は,ライトレールとトレイルとの競合は,
スペインのバルセロナやドイツのフライブルクなどに好例があるように,
両者の間に植樹することで共存できるという話も,紹介しています.

内容が間違っていたりリンク切れがありましたら,ご容赦ください.
posted by NeiTech at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国北東部 II このエントリーを含むはてなブックマーク
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