2009年06月28日

【ワシントンDC】車両老朽化の対策に苦悩

2007年8月に起きたミネソタ州のハイウェイ崩落をきっかけに,全米で
道路関連施設の老朽化が指摘され,その補修が後の連邦予算に反映されて
いきましたが,主に東海岸に点在する老朽化した車両や設備を数多く抱え
ている通勤鉄道に対しても,同じようにいくでしょうか.

ワシントンDC北部でWMATAの運行する地下鉄(メトロレール=Metrorail)が
追突事故を起こして以来,国家運輸安全委員会NTSBの現場検証のため,
ラッシュ時だけ単線で運転されていた区間も,現地時間土曜(6/27)から,
徐行運転は残るものの,ほぼ平常通りの運行に戻ったそうです.
WMATA: Washington Metropolitan Area Transit Authority
NTSB: National Transportation Safety Board

それに先立ち,犠牲になった女性運転士の葬儀も行われ,NTSBの調査結果
から,ATOによる自動運転中に非常ブレーキが作動していたことが明らか
になっていたこともあり,被害を最小限に食い止めたとして,参列した
WMATA責任者は彼女をヒーローとして偲んだことも,伝えられています.

この事故の原因究明は,NTSB主導のもとで行われますが,今後数週間から
数か月かかると言われています.
現時点で判明しているのは,追突した112列車がATO運転中であったこと,
非常ブレーキが作動していた形跡があること,先行列車(214)の運転士は
手動運転中で,前方駅に別の列車が停車中のため停止していたと証言して
いること,そしてNTSBの再現によれば,その先行列車の存在がシステムに
検知されなかったことです.これで,軌道回路の問題が浮上しています.

6/25時点のNTSBの発表:
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
June 25, 2009 NTSB Issues Update On Investigation Into Collision
Of Two Metrorail Trains In Washington, D.C.

(NTSB 公式サイトへのリンク)
車両番号まで記載された,News Q & A: June 22 Red Line Collision
(WMATA 公式サイトへのリンク)
これによれば,112列車の組成は,1079-1078-1071-1070-1130-1131.

一方メディアのほうはと言えば,追突した列車が1970年代から走り続けて
いる最古参(1000シリーズ)の6両で組成され,実はこの1000シリーズが
三年前に安全上の懸念から当局に退役を提言されていた事実が明るみに
なっており,その時に車両を置換えてさえいれば,事故は防げたかもしれ
ないとして,そのまま使い続けたWMATAの責任を問う姿勢です.

もっとも1000シリーズが問題視されたのは,衝突時の耐衝撃性が後に導入
された車両より劣るということで,追突そのものが防げたわけではなく,
衝突による車両の破壊の程度が軽減されて,犠牲者の数が減っていたかも
しれないというものです.

WMATAでは現在,1000シリーズだけの列車組成を止め,編成中央に封じ
込めることを検討しています.これにより両端が耐衝撃性の高い比較的
新しい車両になり,今回のような衝突でも車両の破損が抑制されるのでは
ないかと期待されています.
June 26, 2009 Metro Board to Consider Scrapping Older Train Cars
(WJLA-TV ABC 7 News ニュースへのリンク)

WMATAが車両の置換えを進められなかったのは財政難からですが,メトロ
レールの車両は全部で1126両あり,うち290両が1000シリーズで,全体の
四分の一近くを占めます.この置換えには最低でも8億1100万ドル掛かる
そうです.それに加えリースバック方式のため,1000シリーズの支払いは
2014年まで続くことになっています.

従来ハイウェイへの対応に比べて軽視され続けた公共交通への投資は,
ここにきて景気対策法により若干の改善が見られ,幾つかの新規事業など
には弾みがつきつつあるようです.
しかし,その施設などの三分の一は最低ラインの状態と,この4月にFTAに
査定された,年間30億旅客キロの輸送実績がある全米7都市の通勤鉄道に
関しては,今後も更に利用者数が増え続けると予想される中においても,
老朽化対策に必要な巨額な資金用に回ってくる連邦予算は,これまでの
ところ全くありません.

旧型車の置換えが困難な現状を伝え,事故原因の解明前にも関わらず,
今回の事故が今後に与えるかもしれない影響を示した報道:
Jun. 26, 2009 The Metro Crash: A Nation's Aging Transit System
(TIME へのリンク)
June 27, 2009 D.C. Metro Crash Highlights Underfunding of Public
Transit Systems
(ABC News ニュースへのリンク)

今後,軌道回路の不具合などが立証され,それも老朽化が引き金だった
ともなれば,風向きが変わってくるでしょうか.

内容が間違っていたりリンク切れがありましたら,ご容赦ください.
posted by NeiTech at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国北東部 II このエントリーを含むはてなブックマーク
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