2006年03月27日

【ワシントンDC】モール循環バス新登場

今週から桜まつりが行われるワシントンD.C.では,観光客が増えるこの
時期を見越して,先週からナショナルモールを循環するシャトルバスが
運行を開始しています.Circulator(サーキュレーター)と呼ばれるバス
は,時刻表を必要としない運転間隔(5分から10分)で,国立航空宇宙博物
館,ナショナル・ギャラリーなど,一連のスミソニアン博物館群が点在
するモールを巡回します. Circulator (公式サイト)
DC Circulator Launches a New National Gallery of Art/Smithsonian
Loop Around the National Mall - 3/17/2006

(The Downtown Business Improvement District リリースへのリンク)

実はこのCirculator,路線は3本目になります.ユニオン駅とジョージ
タウンとの間を結ぶ東西のラインと,ポトマック河畔からモールとチャ
イナタウンを経由してコンベンションセンターに至る南北のラインが,
昨年7月より運転を開始していました.(路線図は上記公式サイトで)

バスはベルギー製で,この地域の通勤の足を担うメトロバスとは異なる
装いで,赤をまとい黄色のサインカーブ模様がアクセントの外観,大きな
窓ガラス,3か所もドアがあるなど,人目を惹いてきたはずです.
flickrで見る DC Circulator
rllayman's photos / Tags / downtowncirculator

上記リンク先のコメントにもありますが,およそ米国の路線バスとは思え
ない車内です.日本では全く珍しくありませんが,米国では下車を告げる
には水平に張られた紐を引っ張るか,紐を模したテープ状のスイッチを
押すのが大半で押ボタンは少数派ですし,降車時に中扉を開けてもらう
ためのボタンも見たことがありません.気付いてもらえない場合には,
ドライバーにバックドアプリーズと叫ぶしかありませんでした.
また,一番後ろにはたいていエンジン機器が詰まっていて,後方の視界が
開けているバスなど,少なくとも米国の低床バスにはなかったでしょう.
路上のパーキングメーターで切符が買えてしまうところも面白いです.

実はこのバス,カルフォルニア州オークランドで走らせる予定で,当地の
AC Transitが購入したバスですが,使われずに車庫で眠っていたものを,
買い取ったものでした.
ワシントンでの使用にあたり,空調などを強化したようですが,それでも
米国製の強烈なクーラーに慣れっこの市民には不満があったようですし,
座席数が思いのほか少ないのも不評だったようです.
Washington, D.C., circulator system picks up
(2006年1月 Metro Magazineのニュースへのリンク)
Van Hool Buses (AC Transit 公式サイトへのリンク)
Transit on Tuesday (2005/7/19付け DCist ブログへのリンク)

Circulatorは,公式サイトでも紹介されているように,珍しい官民協調
体制が取られています.コロンビア特別区の運輸省と,ワシントン首都圏
交通局WMATAに,2つのビジネスグループのほか,コンベンションセンター
や,沿線4つのBIDが構成メンバーに名前を連ねる非営利団体のDC Surface
Transit, Inc.が加わっています.
(顔ぶれの詳細はCirculatorの公式サイトで)
WAMTA : Washington Metropolitan Area Transit Authority
BID : Business Improvement District
直訳ではビジネス改善地域となりますが,その地域の土地所有者と商業主
らが資金を出し合い,それを地域活性化やマーケティング,メンテナンス
などに活用する制度で,官民が手を携える街づくりの一手法.
州により名前が異なるそうですので,オレゴン州ポートランドの市電導入
や,ワシントン州シアトルで導入予定の路面電車の資金調達に関わって
いる,LID(Local improvement district)と同じシステムと思います.


そして,バス運行そのものは,表に出ることがほとんどないように思わ
れるのですが,First Transitが担っています.英国などで交通機関の
運営を手広く行っている,Firstグループの米国での一員のようです.
First Transit Awarded Contract To Provide New Bus Service In
Downtown Washington, DC

(First Transit プレスリリースへのリンク)

Circulatorを走らせる目的は,観光客への便宜を図るだけでなく,地域
内の移動の足となることや,沿線の店に人が集まるようにすることです.
もちろん,道路混雑の緩和と,大気汚染の緩和もあります.
地下鉄とメトロバスを運営するWMATAとの違いは,WMATAが郊外からダウン
タウンへの通勤需要に応えるのに対して,Circulatorは都心内での移動
需要を満たすためにつくられます.単純な比較はできませんが,日本では
東京の丸の内シャトル,メトロリンク日本橋が,好例かもしれません.

これまでの2路線によるサーキュレーター(Circulator)は,徐々に良く
なってきているとは言え,乗車率が今ひとつ冴えず,予想を下回る結果
に終わっていました.しかし,観光資源の豊富なナショナルモールを巡る
路線を加えることにより,相乗効果が期待されています.2時間以内で
あれば,Circulator同士の乗換えは無料だそうです.
Circulator Bus Service Heading Toward the Mall
(3/19付けWashington Postのニュースへのリンク)

路線新設に際して,車両増備の話はどこにも出てきません.AC Transit
からはバスを29台購入していました.これまでの2路線は24台で賄われて
いて,残り5台は改修でベルギーのメーカーに送られたあと,預けたまま
になっていました.今回はそれを戻して使うのかもしれません.

ワシントンポスト紙が書いているように,モール循環路線を設ける案は
計画当初からありました.ところが,モール一帯は国立公園扱いになって
いる関係上,バス一本走らせるだけでも連邦のお役所が絡んできます.
また,今はTourmobile Sightseeing Inc.という業者だけが,独占的に
旅客輸送を行えることになっていたのです.
このツアーモービル(Tourmobile)を利用するには,大人一人平均20ドル
が必要です.観光ツアー形式になっているためです.
しかし,国立公園を管理する役所のNPSとツアーモービル(Tourmobile)
との契約は,2007年に切れます.
このため,NPSは代替手段を模索してきました.新設のCirculator路線
は,NPSが管理する公園内の輸送手段を必要とするエリアのごく一部を
カバーするだけですが,直接利害の対立するTourmobileだけではなく,
NPSも歓迎ムードではないようです.これはNPSの貴重な財源となって
いる,営業権を与えて得られる見返りが,Circulatorでは得られないから
という見方もあります.
NPS : National Park Service
Tourmobile (公式サイトへのリンク)
Transportation Study
(NPS公式サイト National Mallのページへのリンク)
Speaking of mobility...
(3/21付け Rebuilding Place in the Urban Space ブログへのリンク)

その他の関連リンク :
Circulator計画のPDFファイル
(全てダウンロードすると199ページ4MB近いファイル容量)

District of Columbia Downtown Circulator Implementation Plan
(コロンビア特別区 運輸省 公式サイトへのリンク)
運転開始後3ヶ月の時点でのあるブログ.ガラガラだと言っています.
D.C. Circulator buses mostly empty
(2005/10/06付けLive from the Third Rail ブログへのリンク)

Circulatorは,要は都心循環シャトルバスということで,米国でも特に
珍しいわけではありませんが,評判の芳しくないWMATAのバスと非常に
好対照なバスを投入しながら,これまで苦戦してきたり,現在バス専用
レーン導入が検討されている南北ルートの一部は,路面電車(ストリート
カー)計画とも重なるなど,今後も動向を注視したいと思います.
posted by NeiTech at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 米国北東部 このエントリーを含むはてなブックマーク
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