最大十路線が通り,一日1340本の市電が行き交う場所を,夏休み期間中
とはいえ,六週間も工事で電車運行を止めていたバーゼル(Basel)で,
昨日(8/14)からようやく路面電車(Drämmli)が戻ってきました.
工事が行われたのは,沿道の市営カジノ内にある,音楽ホールへの騒音と
振動を緩和するためのもので,基礎から全て作り変えなければならず,
六週間の電車の運休は止むを得ないものでした.その工事は,180名が
6千時間に及ぶ作業を行い,軌道部分はこのたび終了しましたが,まだ
周辺の工事が年内いっぱい続けられるそうです.
路面電車に乗っていたり,沿線を歩くだけでは,電車の騒音は他の音とも
紛れててしまい,そうそう実感できるものではありませんが,ひとたび
静かな部屋に落ち着いてみると,電車が走るだけで結構な音を感じると
ともに,場合によっては振動を感じるものです.これがコンサートホール
ならなおさらで,よくこれまで辛抱してきたものだと思います.
ホールはカジノと同じ建物にあるようで,そこからの騒音は問題ないのか
という突っ込みがあるかもしれませんが,それについては不明です.
工事は,基礎の上にコンクリートのスラブを敷き,その上にレールが敷設
されるものですが,スラブは750個ものコイルばねにより,5cmほど基礎
から浮き上がるようにします.これが防振防音に功を奏するのでした.
(下のほうで少し詳しく解説します)
運転再開そのものは予定通りですので,取り立てて報道はありませんで
したが,運転再開に先立つ試運転の際には,工事がうまくいったことを
伝えるものがありました.
上から順に,試運転が8/12に行われることを予告,次がその試運転が首尾
よく実施されたこと,最後は試運転の際の運転士のコメントと,今日から
営業運転が再開されるという内容になります.
残念ながらBasler Zeitung紙のサイトは登録制で,読むことが無理かも
しれません.
10.08.06 «Drämmli» rollen bald wieder durch Basler Innerstadt
(Basler Zeitung ニュースへのリンク)
12. Aug. 2006 Basler Tram mit Schalldämpfer
(20minuten ニュースへのリンク)
14.08.2006 Tramführer im Schwimmkurs
(Basler Zeitung ニュースへのリンク)
工事運休に伴うBVBからのお知らせ : 01.06.2006 Sperrung Steinenberg
(BVB 公式サイトへのリンク)
BVB : Basler Verkehrs-Betriebe
工事関係の資料(PDFファイル)
概要 : Informationsveranstaltung vom 26. Juni 2006 (2,5MB)
5センチ浮上が確認できる軌道の断面図 :
Beilage Mass-Feder-System schwer Querschnitt
工事現場の詳細地図 :
Planbeilage Masse-Feder-System schwer [287.5 kB]
(ここまでバーゼル・シュタット州 公式サイトへのリンク)
音楽ホール側からの工事に関するより詳細な資料 :
Elastische Gleislagerung Steinenberg / Theaterstrasse
(Basler Stiftung Bau & Kultur へのリンク)
工事の様子は,15分間隔に撮影されるウェブカメラで逐一公開されていま
した.15分間隔x50枚分の画像を保存しているサイトがあります.
Sammlung der letzten 50 Bilder (mobotix.ch へのリンク)
工事が終わった今では,電車が走っているのが見てとれます.ただし,
これがいつまで公開されているかは判りません.
工事の様子は伺えませんが,現場の位置関係などを把握できるサイト :
Virtuelle Stadt Barfüsserplatz (バーゼル市 公式サイトへのリンク)
ウェブカメラによる画像は,50枚分までしか遡れませんが,工事開始前
から工事の経過を膨大な画像で詳細に紹介しているサイト :
Spezial: Sanierung Steinenberg
(www .trambilder-basel .ch へのリンク)
現時点で800枚近い画像があります.工事の様子ばかりでなく,レールが
のるコンクリートプレートを支えるコイルばねや,それを収容するシリン
ダーのクローズアップから,試運転前夜に行われた作業員のパーティーで
供されたご馳走まであります.
時々ウェブカムからの画像がキャプチャーされながら,話題が展開した
バーゼルの路面電車フォーラム :
Tramforum Basel (ドイツ語のトラムフォーラムへのリンク)
スレッドのタイトルは,Totalsperrung Steinenberg Juli/August 2006
今回の軌道はドイツ語ではMFSSと呼ばれるシステムを採用しています.
英語ではMass-Spring-Systemと呼ばれ,インターネットで検索する限り
でも,かなりの場所で採用されています.
MFSS : Masse-Federsystem schwer
MFSL : Masse-Federsystem leicht
MFSSとMFSLはヘビーに対してライトです.MFSSの方が防音効果が高いの
ですが,同時に費用もかさみます.
今回のケースではMFSSが1180万ユーロに対して,MFSLなら690万ユーロと
見積もられていました.しかし,MFSLでは期待できる防音効果が小さい
ため,差額490万ユーロを支払っても,MFSSでということになりました.
差額のうち300万ユーロはBasler Stiftung Bau & Kultur(財団)が,残り
190万ユーロはバーゼル・シュタット州が負担します.
この分野では,オーストリアのゲッツナー社(GETZNER)によるマス・スプ
リング・システム(MFSSまたはMFSL)が有名ですが,バーゼルでは,防振
素材として鋼鉄製コイルばねを用いたGERB社のMFSSが採用されました.
鉄道車両台車の枕ばねに使われるコイルばねよりも一回り大きなバネが,
円筒形の容器に入れられてレールの両側に無数に置かれ,それで道床を
持ち上げるようなスタイルから,ジャッキ・アップという表現も使われて
います.上でリンクを紹介した,工事現場の詳細地図で,軌道両側に赤い
小さな点が無数に描かれていますが.これがバネの入ったシリンダーの
位置でしょう.今回は750個とも760個とも言われています.
Basler Stiftung Bau & Kultur の下記サイトでは,フラッシュでホール
前の線路を電車が走るアニメーションが展開されますが,最後は下から
バネで支えるようになります.少々大げさな描写に見えますが,あながち
ウソではないのです. Tramgleissanierung Steinenberg
GERB社のサイトによれば,同様の軌道は1995年から主にドイツを中心と
して地表の路面電車軌道だけでなく,地下でも導入されています.地下で
採用されるのは,狭い場所でも使えるという利点があるからです.
ドイツ以外ではブラジルの首都ブラジリアの地下鉄や,米国ではノース
カロライナ州シャーロットでレトロ調の路面電車(Charlotte Trolley)が
走る,コンベンションセンターの場所でも採用されています.ここは現在
ライトレール(Lynx)への転換工事中ですが,その軌道も作り直している
のかどうかは判りません.
コイルばね(helical steel spring)を使ったGERB社の防振軌道 :
Trackbed Isolation // Jack-Up GSI-Elements // GSI-Type Elements
同社システムの他の都市での採用例一覧 (詳細へのリンクあり) :
Projects // Trackbed Isolation // Jack-Up GSI-Elements
(GERB Schwingungsisolierungen GmbH & Co. KG 英語版へのリンク)
日本でも,コイルばね防振軌道システムとして,下記サイトによれば,
東京臨海高速鉄道りんかい線の地下区間に採用されているそうです.
コイルばね防振軌道システム (清水建設 へのリンク)
誤訳や誤解で内容が間違っている可能性もあります.ご容赦ください.
過去ログ : 2006/6/27 6週間トラム計画運休で9路線影響
2006年08月15日
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