ポートランド(Portland)のストリートカー(路面電車)は,米国各地の都市
開発関係者にとって,成功例として広く知られています.この5年間で,
沿線2ブロック範囲内への投資額は,23億ドルに達しているそうです.
これを見習って,街の中心部を活性化したいとして,市電の再導入を検討
する地域の市長や開発業者らが,視察と称してオレゴン州まで足を運ぶ
こともしばしばのようです.
ウィスコンシン州の州都マディソン(Madison)も,その一つです.
しかし,そのマディソンで発行される新聞に,ポートランドのストリート
カーが成功しているかのように見えるのは,実はでっち上げであるとする
コラムが掲載されました.
寄稿したのは,ポートランドを拠点とし,英語版ウィキペディアにも名が
載っている,公共政策の専門家です.
実は,マディソンで記事になったのこそ先日ですが,同じ趣旨の原稿は
既に昨年発表されていました.今後も各地の新聞に寄稿するつもりかも
しれません.
ポートランドの市電が走る沿線のうち,特に2001年に開業した元は鉄道の
操車場だったパール地区(Pearl District)と,最近路線を延伸させている
サウスウォーターフロント地区(South Waterfront District)沿線では,
建設ブームが起こっています.
他都市からの視察団は,これを市電が走ることによる経済効果だと説明を
受けて地元に帰っていきますが,コラムでは,開発を促すため,幾つかの
方法で補助金が開発業者に出ているという裏があると言い,その補助金
さえあれば,市電が走らなくても建設ブームは起き,補助金がなければ,
市電だけ走らせても何も起こらないと説いています.
その補助金は,市民が負担しているばかりでなく,それに巨額の資金が
回されるため,TriMetが運行する路線バスや,ライトレールのMAXへの
予算があおりを受けて削減,減便を余儀なくされて客離れを招いたり,
果ては,他の公共事業,学校とか消防,警察,公衆衛生の分野への予算も
圧迫していると記していました.
市電沿線への開発促進の裏金の一件は,2004年に州知事のスキャンダルが
暴露された時に,文書が公開され発覚したようです.スキャンダルの話は
インターネット上でも情報がありますが,裏金にまつわる話はよく判り
ません.これは私見ですが,事実だったとしても,それが他の交通機関や
公共事業に与えた影響の大きさは,誇張されているようにも思います.
それと,ダウンタウンで働く従業員のうち,1%しか市電を通勤に利用して
おらず,開業した2001年も5年後も同じ割合と書かれていますが,これは
ポートランドの市電の性格から言って,通勤客が多く利用するような路線
ではありませんので,それを声高に主張するのは筋違いでしょう.
(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
マディソン市民は,どのように受け止めたでしょうか.
January 8, 2007 Portland's streetcar success just a hoax
(The Capital Times ニュースへのリンク)
奇しくも同じ日に,USAトゥディ紙が,逆に路面電車の魅力を多くの街が
再発見していると題する記事を出していました.こちらはNation面です.
地区同士を結びつけ,自動車や徒歩に代わる手段として,また,道路渋滞
緩和を願い,公共交通機関の充実を希望しながらも,ライトレールでは
荷が重い,つまり,予算が足りない,移動時間を短縮できない,距離が
足りないなどで,連邦から補助金が出る見込みがない街でも,路面電車
なら手が届くかもしれないということで,近年注目を集めていると,ここ
では好意的に紹介されています.
1/8/2007 Cities rediscover allure of streetcars
(USA Today ニュースへのリンク)
フロリダ州タンパ(Tampa)のTECO Line Streetcar Systemでは,建設に
5500万ドル投じた見返りとして,民間から10億ドルの投資を呼び込んだ
例や,ミシガン湖畔のウィスコンシン州ケノーシャ(Kenosha)での例も
紹介されています.
ケノーシャでは,街を支えてきた工場群が閉鎖されたあと,街の改革の
一環として路面電車を再導入し,工場を取り壊したあとにハーバーパーク
(HarborPark)を建設,路面電車で中心部や駅と直結させたり,その他にも
観光客を呼び込める施設を造成していった結果,今ではシカゴから移り
住む人も増えるようになり,地価も上昇してきているそうです.
ポートランドの市電に話を戻します.最近の話題としては,
先月,チェコのオストラヴァ(Ostrava)で試運転が行われていた増強用の
車両3本が,昨年中に米国東海岸ボルティモア港に到着しているはずで,
予定通りならそろそろポートランドに到着している頃かもしれません.
しかし,現在のサウスウォーター地区の終点,SW Moody & Gibbsから,
住宅地を飛び越え山上にある大学OHSUへ向かうロープウェイ,Portland
Aerial Tramの開業までに,営業運転は間に合いそうにないそうです.
ロープウェイは1/27に開業が予定されています.その週末には,予備車
無しとなる現有7本が総出で,乗客の輸送にあたることになります.
OHSU : Oregon Health & Science University
Streetcar Map (ストリートカー路線図)
(Portland Streetcar Inc. 公式サイトへのリンク)
そのロープウェイですが,運賃は$4になる予定という報道がありました.
2004年の段階では,TriMetの運賃(現在$1.70)が摘要されるはずでした.
TriMetの運賃は2時間有効で,2時間以内なら往復しても$1.70です.
しかし,往復$4のみとなりそうな気配ということで,The Oregonian紙の
社説では,再考を促していました.
Jan 9, 2007 Tram ride will now set you back $4
(KATU Portland ニュースへのリンク)
January 10, 2007 Tram fare should equate to bus, train
(The Oregonian ニュースへのリンク)
$4は,運営費が当初計画の予想を超えることが判ったからのようですが,
高額運賃になるばかりでなく,日曜日の運休も考えられています.
このロープウェイは,KATUの記事で山岳ロープウェイと比較されています
が,建設費が予算を大幅に超過していますし,一般への営業開始後も,
前途多難になりそうです.実際,OHSU職員は既に先月から利用していて,
予想を上回る一日1600人が乗車しているとのことですが,ロープウェイは
その十倍の一日1万6千人まで輸送可能です.
それでも,1月最後の土日には,予約客は無料で乗車体験できるとのこと
で,昨日より受付を開始した予約は,午後までに1200人分が埋まったとの
ことです.
1/10/2007 Reservations Filling Up For Free Tram Rides
(KOIN News 6 Portland ニュースへのリンク)
リンク先には,ロープウェイの豊富な画像の中に,ポートランド市電の
駅や軌道との位置関係がわかるものも含まれています.ロープウェイの
発着場の横に建設されているレールは,今秋延長開業が予定されている
区間のもので,現時点では営業運行はありませんが,この秋には地上での
ツーショットが撮れるのかもしれません.
Portland Oregon Aerial tram
(SkyscraperCity フォーラムへのリンク)
誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.
ポートランド関連 直近の過去ログ :
2006/12/08 市電オストラヴァで試運転
2007年01月11日
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