2007年08月16日

トラムに匹敵【パリ】出だし好調のヴェリブ

パリでセルフサービス式のレンタル自転車,ヴェリブ(Vélib')がデビュー
して1か月,出足は順調のようです.

Vélib'は,日本語でも既に多くの場所で紹介されていますが,その概要を
まず記します.ご存知の方は公式サイトへのリンクの先まで読み飛ばして
ください.

このレンタサイクルは,事前に登録さえ済ませておけば,1回の利用に
つき最初の30分間は無料ということと,無人の貸出しスタンド(駐輪場)が
市内300メートル毎に設置されるため,街中をちょっと移動したい時や,
駅から目的地が少し離れているなどというようなケースにも利用できる
仕組みです.無人の貸出しスタンド(駐輪場)は750か所からスタートしま
したが,年末には1451か所まで倍増する計画です.自転車も1万台が用意
されて営業開始となりましたが,これも年内には倍の2万台になります.

登録は有料ですが,その登録料は1日だけなら1ユーロ,1週間は5ユーロ,
年間でも29ユーロで,期間中は無制限に借りることができ,最初の30分は
無料で,初めの30分延長が1ユーロ,その次の30分延長は2ユーロが加算
され,3回目以降の30分延長からは4ユーロずつの加算です.ややこしい
料金体系ですが,長く利用すると,それだけ料金がかさんできます.
例えば,60分は1ユーロですが,90分は3ユーロになり,2時間は7ユーロ,
3時間は15ユーロになっていきます.観光地にあるような貸し自転車の
感覚で数時間使うと,大金を支払うハメになりそうです.
1回の利用につき最初の30分は期間中何回でも無料ですので,目的地に
到着する前に無料の30分が迫り,近くの貸出しスタンドで自転車を乗り
換えると安上がりになりそうですが,一旦返却したあと一定時間の間は
同じ登録では貸出しできないように設定されているとのことです.

無人貸出しスタンド(station)は,1日24時間365日稼動しています.
場所にもよりけりですが,ひとつの場所に数十台もあるわけではなく,
十数台程度ですので,スタンドに行っても自転車が出払っていたり,逆に
返したいのに返却できる空きがないというようなこともあります.それに
備える形で,各スタンドには最寄の場所を探せる画面があったり,Vélib'
公式サイトにアクセスすると,貸出し可能台数(Vélos disponibles)と
返却受入れ可能台数(Points d'attache disponibles),全体の数(Nombre
total de points d'attache)など利用状況が,Google MapsのAPIを利用
した地図上でインタラクティブに確認できるようになっています.
ちなみに,年間登録者が返却時に空きがなかった場合,ICカードを満杯の
スタンドの所定の位置にかざすと,15分の猶予を与えられるそうです.
RATPやパリ近郊のSNCFで使われているICカード型乗車券,Navigoを登録
することもできます.

公式サイトのスタンド検索画面で表示される台数をみていると,やはり
深夜時間帯には中心部のスタンドの自転車は出払っていて,市境に近い
ところに自転車が集まっている様子が伺えます.メトロやバスの運行が
終了したあとの,安上がりな移動手段にもなっているようです.
しかし,自転車の配置を利用者流動だけに任せるわけにはいかないため,
操配専用の運搬車両が用意されていますが,環境への配慮で電気自動車が
用いられています.

これらを導入し,運営管理しているのは,パリ市とSOMUPIという企業体
です.SOMUPIは,世界第二位の屋外広告会社,JCDecauxが66%を所有しま
すが,同社はセルフサービス式レンタル自転車の世界最大手でもあり,
フランスでは2005年に開始されたリヨンでの実績がありました.
JCDecauxは,1964年からリヨンでバスの停留所に屋根や仕切りを設置する
のと引換えに,それらを広告の場として販売,設置資金を回収するという
手法を開始しています.
SOMUPIの運営はよく判りませんが,JCDecauxは8千万から9千万ユーロを
ヴェリブに投入していて,年間の補填は6千万ユーロに契約で固定され,
登録料はパリ市に収められるため,不足する3千万ユーロ近くは,自転車
貸出しスタンドの広告収入で埋め合わせをするようです.

パリ市では,この貸自転車とスタンドの導入に先立ち,2001年から自転車
専用レーンの設置に努めてきました.その総延長は2006年には371キロに
まで達し,メトロ(地下鉄)より長くなっています.この整備がなければ,
いくらきめ細かく貸出し場所を設けても,普及は困難だったでしょう.
ただし,距離にはバス専用レーンを自転車にも開放した区間や,自転車
だけに一方通行を認めた区間なども含まれています.

(外部リンクは新しいウィンドウで開きます)
トップページ : Paris - Vélib - location de vélos à Paris
英語版の解説 : Le dossier de presse Vélib' en anglais(13/07/2007)
(パリ市 Vélib' 公式サイトへのリンク)
プレス向けの資料が,下段のリンク先より入手できますが,JCDecauxの
サイトからも,同じPDFファイルをダウンロードできます.
Press kit about Vélib' (英語版のPDFファイル)
(JCDecaux 公式サイトへのリンク)

ここから,1か月経過後の状況報道に移ります.AFPや各メディアの記事を
総合すると,次のような数字が浮かび上がってきました.

* スタート18日目で100万回目のレンタルを達成,1か月後には150万回に
* 全ての貸出し自転車が一日に走る距離は,地球を四周するほどに匹敵
* 一日平均7万回のレンタル,過去最高は8/04の9万7千回
* 29ユーロの年間登録を,これまでに5万人近く(4万5千人とも)が行う
* 97%が無料対象となる1回あたり30分未満の利用
* 年間登録者の平均利用時間は1回につき15分,短期登録者は同25分
* これまでに自転車の盗難が100台,破損は200台で,いずれも想定内
* 5%の貸出しスタンド(station)でデータの伝送エラー発生

14 août 2007 Vélib': 1,5 million de locations en un mois
(Le Figaro ニュースへのリンク)
14 août 2007 Vélib, un premier mois sur les chapeaux de roue
(Libération ニュースへのリンク)
14/08/2007 Vélib': un mois après, c'est le succès
(La Provence ニュースへのリンク) AFPの記事

このように,多少の問題が露呈したものの,一日7万回も利用されている
ことが判明しました.この数字は単純には比較できないと思いますが,
トラム(Tramway)の利用者数にも匹敵し,大量輸送機関の仲間と言っても
いいのではないかというような表現も他でありました.

交通事故件数の増減は,9月にならないと判らないそうです.
また,気になる他の公共交通(メトロ,バス,トラム)への影響はどうか,
肝心の目的である自動車の交通量を減らすことができたのかどうかは,
触れた記事を見つけられませんでした.

セルフサービス式のレンタサイクルは,欧州各地で流行り始めています.
フランスでも2005年のリヨンを皮切りに,パリの次はマルセイユでも今秋
から開始されるようです.
15.08.07 Après Lyon et Paris, Marseille va bientôt pédaler
(Le Monde ニュースへのリンク) Reutersの記事

最近ではスペインのセビリアや,バルセロナも仲間入りしていました.
ドイツ語のウィキペディアで,Fahrradverleih を検索するとリストや
各地の自転車の画像を見ることができます.
他の街の自転車がド派手な配色なのに対して,パリのは極めて大人しい
色使いです.flickrには600を超える画像投稿があります.
Search results for photos matching Vélib'
(flickr へのリンク)

自転車は,フランスのMercier製ですが,組立はハンガリーで行われ,
タイヤはドイツ,変速機は日本製で,全体の99%がリサイクル可能とか.
14/08/2007 Paris et ses Vélib', "vitrine mondiale" pour le groupe
JCDecaux
(Webmember ニュースへのリンク) AFPの記事

誤訳や誤解で内容が間違っていましたら,ご容赦ください.

フランスのトラムウェイの話題,おまけ :
バッテリーで走る区間のあるニースのトラムは,今後が全て順調の場合で
開業は11月上旬にずれ込みそうです.
今年前半ごろまでは,全く畑違いですが,ボーイング787型機の初飛行と
どちらが先か,賭けができそうなほどでした.
posted by NeiTech at 19:00 | Comment(1) | TrackBack(2) | フランス このエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
ヴェリブ(Vélib')は今どうなっているか、市民はどう感じているか等最新情報がほしいです。教えて下さい
Posted by masa at 2007年11月26日 16:15
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